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環境共生などの社会的責任を自覚して働こう
2022.11.17

人生で影響を受けた人物環境共生などの社会的責任を自覚して働こう

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【99】

環境社会学会の設立に尽力し初代学会長も務められた飯島伸子先生(元東京都立大学教授)です。

先生は20代の頃、当時問題になっていた水俣病の調査に単身乗り込んだという逸話を持つ、正義感とバイタリティの塊のような女性で、いつも人の輪の中心にいらっしゃいました。

10年間の共同研究を通じて多くのことを学ばせていただきましたが、志し半ばで亡くなられたことが残念でなりません。

私は環境NPOや市民活動についての研究に取り組み、その中の一つとして地下水汚染の問題も手がけていました。そこへ転任してきたのが環境問題のパイオニアである飯島先生でした。

飯島先生には学会でよくお会いし、その業績には畏敬の念を抱いていました。そんな先生から「寺田先生、環境問題を研究しているなら一緒にやりませんか?」と声をかけていただいたのです。

海外調査にもご一緒し、-20℃の韓国の山中に行った2週間後には、50℃にもなるオーストラリアの砂漠で、核実験の被害を受けた先住民の話を、何時間にもわたり一緒に聞いたこともあります。

先生は「環境問題の本質は何なのかをきちんとみなさい」と大学院生には話し、私たちには「環境調査はまず一番弱い人、被害を受けている人のところへ行くのよ」と教えてくださいました。

当時まだなかった “人種や民族、貧困や地域格差に基づく、環境汚染や健康リスクの格差はあってはならない”という「環境正義」の概念を、すでに意識していらっしゃったのだと思います。

近年のESG投資においては、例えば欧米のビジネス界などでは、環境との共生を前提としない企業は、市民からの批判のみならず資金調達が困難となるなどの傾向が明確になってきています。

日本でも環境はもちろん人権、平等、情報公開などのソーシャルなマインドは、企業の責任として当然のことになりつつあります。

正義感とバイタリティで日本の環境社会学を創造し、環境と社会的公正の両立する社会を目指した先生の姿勢を、現代のビジネスパーソンの方々も参考にしていただければと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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