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新しいものを生み出す時は、先人に学ぼう

伊藤 真紀 伊藤 真紀 明治大学 文学部 教授

歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。

教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【44】

私が尊敬している人物は、沈黙劇で知られる劇作家、演出家の太田省吾さんです。テレビや映画で活躍された大杉漣さんが所属されていた劇団「転形劇場」を主宰されていました。

1970年代の太田さんの作品に、『卒都婆小町』などの“小町もの”と呼ばれる能を下敷きにした『小町風伝』という作品があります。演劇学を専攻していた学生の時に知ったのですが、本当にすごい作品だなって思いました。

アパートで暮らす老婆(小野小町)が若かりし頃の恋を思い返す物語で、能の表現や世界観を活かした現代劇なのですが、この作品は実際に神楽坂にある矢来能楽堂で初演されたのです。

当時、能舞台は特に神聖なものとされていたので、能以外の芸能が上演されるなんてとても珍しい事でした。しかも「アングラ演劇」と呼ばれ、猥雑なイメージのある、新しいジャンルの劇だったので余計に大変だったのではないでしょうか。

でも『小町風伝』は能の持つ詩情や美しさ、舞台空間などを上手に使ったお芝居だったのです。沈黙の部分が多く、説明はありませんが、物語の面白さはちゃんと伝わってきました。

私は、この作品を通して伝統芸能である能というものの魅力を教えてもらったような気がします。それは太田さん自身が能の本質をきちんと理解されていたからでしょうね。

先行する芸能を残しながら新しいものが出てくるというのが日本の演劇の特徴です。ですから、能も狂言も、歌舞伎もありながら同時に現代劇も存在していますよね。

古典劇の伝統をもとに、最も新しい演劇を成立させたという意味で、『小町風伝』に勝る作品は、今も出て来ていないと私は思います。

何か新しい試みをする時は、先人の功績や伝統に目を向けてみてはいかがでしょうか。そして、どこが素晴らしいのか、表面的な部分だけではなく、その本質や特質を理解するように努めてみる。

そして、太田さんのように果敢に挑戦する勇気を持てば、きっと新しい道が開けるのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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