
2022.06.28
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。
私が人生で影響を受けた研究者は、物理学者の寺田寅彦先生です。さかのぼりますが、私の恩師である前晋爾先生、その師匠である中谷宇吉郎先生の師にあたる方です。
寺田先生は夏目漱石の友人で、小説『吾輩は猫である』に登場する物理学者・水島寒月のモデルとしても知られています。
研究者としての寺田先生は、日本におけるX線結晶学の先駆者として知られていますが、実は高分子の物性研究を世界に先駆けて行った科学者でもあります。
また、地震や気象などの自然現象にも関心を持ち、物理学を応用した多岐に渡る研究で多くの功績を残しました。
物理を学んできた私がいま応用化学科にいるのも、物理の視点を実際の生活に応用できたら、という想いから。
“常識にとらわれない”自由な発想で様々な研究に取り組んだ寺田先生の信念が、弟子である中谷先生、前先生を通して、私にも受け継がれているのだと思います。
こうした“常識にとらわれない”発想を持つことは、若い頃は比較的簡単です。しかし年齢を重ねると知識が邪魔をして難しくなることも。一方で、若い時には大胆な発想が生まれても実は知識が足りなかっただけ、ということもあります。
年齢や分野に関わらず“常識にとらわれない”自由な発想を生み出すためには、他者の考えを理解しようとする謙虚な姿勢と、多くの情報に圧倒されることなく冷静に分析し、まだ誰も気づいていない新たな緒を見つけようとする柔軟な思考が大切です。
これは何も研究だけに限りません。日常生活で行き詰まったときには、発想を転換したり、見方を変えたり。“常識にとらわれない”自由な発想が助けになるのではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。