人生で影響を受けた人物同じ志を持つ人との関係を、大切にしよう
教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【21】
私がご紹介したいのは、法制史家のミヒャエル・シュトライスさんです。実はつい先日2021年3月18日にお亡くなりになったので、今回は追悼の意を込めてお話しさせていただきます。
彼はドイツを代表する研究機関、マックス・プランク・ヨーロッパ法史研究所の所長を務めるなど、世界的に有名な法制史家でした。
私にとって彼は、法を研究する同志であり、かけがえのない友人。自分の信じる道を勇敢に突き進む姿に、私は共感を覚えていたのです。
彼の勇敢さを示すエピソードのひとつに、まだ研究者として駆け出しの頃、学会でナチス史について発表したことがあげられます。
学問というのは物事の良い点も悪い点も取り上げるべきものですが、戦後のドイツでナチスの良かった点を述べるなど誰もできないことでした。しかし、彼は客観的な記述をやってのけたのです。
また、私が法哲学の国際学会の理事長代行をしていたときにも、その勇気ある行動に感動したことがあります。
学会内で問題を起こす人がいて、それがミヒャエルの同僚だったのです。彼に相談したところ、公正な判断のために必要なことをした上で、私の考えが正しいと判断し、その同僚に働きかけてくれました。
彼は自分の利害や職場での居心地の良さよりも、正義を貫くことを大切にしていたため、私に協力してくれたのです。
私も言うべきことは言うタイプで、また、笑いのツボも似ていたので、彼とは非常に気が合い、お互いがお互いの生き方を認め合えていたのだと思います。
このように価値観の合う同志、友人と出会えた私は、とても幸運でした。彼がいたことで、私は自分の人生についてより強い自信を持てたのです。
皆さんも、もしそういった人と出会えたら、大切に友情を育んでいきましょう。きっと一生の財産になるはずです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。