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#4 フードバンクが正しいというのは間違い?

小関 隆志 小関 隆志 明治大学 経営学部 教授

企業もフードバンクへの食品の提供に不安をもっている

前回は、フードバンクの配布量の問題について述べましたが、企業側は企業側で、食品を寄付することに不安感をもっています。

まず、無償で寄付した食品が横流しされることを心配します。つまり、転売されたり、安売りされると、企業のブランドイメージに傷がついてしまうからです。

また、寄付した食品によって食中毒などの事故が起きることも不安です。だからこそ、通常は食品を消費期限前に店頭から撤去し、安全性を担保しようとしているのです。

そこで、フードバンクの団体は、食品企業などから食品を受け取る際には、厳しい規定を網羅した同意書を交わします。

そこには、決して横流しなどしないこと、また、食中毒などの事故が起きた場合、企業もフードバンクの団体も責任を負わないことが述べられています。

その背景には、寄付された食品は非常に厳密な管理を行い、食品を提供した施設などには、消費期限前に食べることを徹底することがあります。

つまり、決していいかげんな管理はしない一方、問題が起きた場合は免責ということです。こうした同意書は、施設とも取り交わすことが多いようです。

食品の取り扱いなので、非常にデリケートな問題ですが、これで、みんなが本当に安心し、納得できるのでしょうか。

実際、食品の寄付に二の足を踏んでいる企業は多く、フードバンクの団体は、すでに食品の提供を行っている企業の体験談などを紹介し、安心を得ようとしています。

さて、フードバンクの活動には、こうした問題や課題があることがわかってくると、フードバンクは果たして正しい考え方なのか、本当に良い活動と言えるのか、という疑問が湧いてくると思います。

実は、こうした疑問はフードバンクの研究者たちの間では以前からあり、2014年に発表された「First World Hunger」(「第一世界の飢餓」第一世界とは最も豊かな国、いわゆる先進国を指す)では、市民の慈善活動や寄付を集めてみても、それだけでは飢餓や貧困の問題は解決しない。解決すると思うのは幻想だ、ということが指摘されています。

この本の研究者たちは、慈善活動も大事だが、それ以上に重要なのは、社会保障が機能することだと言うのです。

その根底にあるのが、「食料への権利」という考え方です。すなわち、食事をとることは、人権のように、最も基本的な人間の権利であり、それは守られなければならないということです。

だから、フードバンクのような施しではなく、社会保障制度が重要だと言うのです。

次回は、フードバンクと社会保障制度について解説します。

#1 フードバンクとは?
#2 フードバンクは食品ロスと生活困窮者を救う?
#3 フードバンクはどれくらいの食品を配布しているの?
#4 フードバンクが正しいというのは間違い?
#5 フードバンクと社会保障制度は連携するの?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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