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#3 税金がなければ自由に使えるお金が増える?

星野 泉 星野 泉 明治大学 政治経済学部 教授

税金を含めた社会保障がなければ、むしろ自由に使えるお金は減る

日本の税負担は、GDP比で見ると、OECD(経済協力開発機構)諸国の中でかなり低い水準です。特に消費税が低いことは、知っている人も多いと思います。

例えば、EUは、域内の標準税率を最低15%としています。でも実際には、ほとんどの国が20%以上です。福祉国家として知られるスウェーデンは25%ですし、ハンガリーは27%です。

それに比べると、今秋から10%に引き上げられる予定の日本の消費税は、非常に低いのがわかります。

同様に、所得税も低い水準です。一方、法人税は少し高めですが、かつては、他国よりかなり高い時期がありました。

所得税とともに、1980年代から法人税も減税されていきましたが、このタイプの税は世界的で引き下げ競争になっているので、その勢いに追いつかないという感じです。また、社会保険料もOECDの平均より高めです。

高いもの、低いものを相殺し、税と社会保険料を合わせた国民負担率を見てもかなり低い水準になるのですから、日本の消費税や所得税がいかに低いかわかります。高齢化や少子化が進展しても税負担率上昇につながっていない珍しい国なのです。

なぜ、世界的に見て、日本の消費税や所得税は低いのか。要は、政治的な思惑によるのですが、それは、あえて言えば、日本人が、税金を嫌いだからです。

例えば、多くの日本人が、税金を取られるものと思い、取られなければ、手取り収入すべてが可処分所得として、自由に使えて幸せ、と考えているのではないでしょうか。しかし、それは大きな考え違いです。

例えば、アメリカの社会保険料負担率は日本の半分以下です。すると、当然、社会保障は日本よりも充実していないので、その分、お金のある多くの人は民間の様々な保険に入ります。高額所得者ばかり、健康な人ばかりの保険があれば、安くなることはあるでしょうが、それではそもそも社会保障にはなりません。

同じような保障内容であれば、社会保険料より、民間の保険の方が割高になるでしょう。当然、自由に使えるお金は減ります。でも、彼らは、万が一のときや将来のために、自ら保険に入るのです。社会保障負担率にはカウントされませんが、自己負担による年金、医療負担です。それも、保険料を負担できる人のみということになります。

つまり、保険料を役所に払うのか、民間に払うのか、と考えてみてください。日本人は税が投入されることで割安になる役所に払っていながら、それを嫌々払っているということです。それは、税金を払ったら、保険料を払ったらそれがどう戻ってくるのか、という意識がないからでしょう。

でも、これは、所得税や消費税にも言えることですが、私たちは税金を払うことで、様々な公共サービスや社会保障を受けているのです。戻ってくる仕組みがよくない、あるいは政府が信じられないからという理由もあるかもしれませんが、それならなぜ選挙に行かないのでしょうか。制度の問題は、これとは別に検討する課題です。負担率が小さいがゆえに、年金医療ばかりで、保育など若い人向けサービスが足りない、今の若者は年金などもらえるかどうか、といった世代間対立が生じてくるのです。

スウェーデンは、社会保障制度が充実しているのはもちろんですが、国民に、「政府に貯金する」という意識があります。だから、高い所得税や消費税でも納得しているのでしょう。日本人には、そうした意識がほとんどありません。税に対する理解がスウェーデンと日本でこれほど違うのは、実は、教育によるところが大きいと言えます。

次回は、スウェーデンの教育について解説します。

#1 日本の少子高齢化は、さらに進むの?
#2 消費税の導入で生活者の負担は増えた?
#3 税金がなければ自由に使えるお金が増える?
#4 日本人は税金の意義を理解していない?
#5 増税によってみんなが納得できるようになる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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