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理系の思考と簡潔な表現で読む人を納得させよう

早川 智一 早川 智一 明治大学 理工学部 専任講師

ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。

教授陣によるリレーコラム/40歳までに読んでおきたい本【16】

木下是雄『理科系の作文技術』(中公新書・1981年)

「われわれの職務を遂行するには大量の書類を読まねばならぬ。その書類のほとんどすべてが長すぎる。時間が無駄だし、要点をみつけるのに手間がかかる。同僚諸兄とその部下の方々に、報告書をもっと短くするようにご配意ねがいたい」

これは、『理科系の作文技術』の序章で引用されているイギリスの元首相・チャーチルのメモ(抜粋)です。私たちはどの学部・学科を卒業しても、会社に入れば報告書や企画書など、数多くの文書を作成する機会に直面します。こうした文書のまとめ方について理系的にはかくあるべしという風に解説しているのが本書です。

例えば、段落の切り方について説明した部分では、パラグラフとは何かという基本的なことから、段落の先頭には一番言いたいことを書き、段落の残りはその文章を支えることしか書いてはいけないなどと述べられています。

この書き方の利点は、各段落の最初の一文を拾って読むだけで文書の要約になることです。普通の日本語の文章はなかなかそうはなっていませんが、英語の文章はこのことを意識して書かれていることが多いようで、英文速読のコツと言えるかもしれません。

外国ではレトリックなどの書くための技術を幼い頃から学びますが、日本人の文章はともすると冗長になりがちです。考えるときはそれでよくても、文章に落とし込むときには読み手のことを意識する必要があります。

起承転結の順ではなく結を最初に持ってくるなどの手法は、完全には納得できないかもしれませんが、ひとつの視点として理解できると思います。理系に限らずすべての方にとって、一読すると心構えが変わるかもしれないオススメの一冊です。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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