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#4 法によるフェイクニュース対策を望む?

清原 聖子 清原 聖子 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授

法規制を進める国や、非営利団体のファクトチェックが広がる国もある

フェイクニュース対策は、世界各国で始まっています。ひとつは政府の取組みです。難民への憎悪を煽るフェイクニュースが目立つドイツは、2017年10月にフェイクニュースやヘイトスピーチの速やかな消去を義務づけた法律を施行しました。違反すれば、事業者に最大5000万ユーロ(約66億円)の罰金が科されるといいます。同じくシンガポールも、フェイクニュースがまん延するくらいであれば規制すべきだという世論があり、法による規制の準備を進めています。また、フランスでは2018年1月、マクロン大統領が選挙期間中のフェイクニュース拡散対策として立法化の方針と発言しました。

一方で、ドイツの規制内容はちょっとやりすぎだという声や、そもそも法による規制は表現の自由の規制につながるという意見もあります。また、もともとフェイクニュースは定義が難しく、アメリカでトランプ大統領が自分に敵対する主要メディアをフェイクニュース・メディアと批判したように、法による規制では、政府に都合の悪い情報はフェイクニュースだと規制される可能性が出てくるかもしれません。ただ、アメリカでは、表現の自由を擁護する観点から法による規制の動きはいまのところなく、大学や非営利の研究所などによるファクトチェック(事実確認)が進んでいます。例えば、ペンシルベニア大学アネンバーグ公共センターのプロジェクトとして、常時ファクトチェックをする団体があります。主要なアメリカの政治家が発言した内容について正しいかどうか判定し、結果をオンライン上で公開しています。2016年の大統領選挙のときには、タンパベイ・タイムズの記者たちが立ち上げた団体も、政治家の発言といわれる情報を過去の発言と照合し、その真贋をチェックしていました。こうしたファクトチェックの団体は国際的にも広がる傾向にあります。日本でも、2017年にファクトチェック・イニシアティブという団体が設立されました。10月の総選挙の期間中、この団体はファクトチェック協働プロジェクトを行ったということです。

さて、みなさんは、フェイクニュースに騙されるくらいなら、法による規制を望みますか。第三者機関のファクトチェックを頼りにしますか。それとも別の対策を望むでしょうか。

次回は、私たちができるフェイクニュース対策について解説します。

#1 フェイクニュースって、なに?
#2 日本では政治目的のフェイクニュースは少ない?
#3 フェイクニュースの拡散は防げる?
#4 法によるフェイクニュース対策を望む?
#5 メディアリテラシーって、なに?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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