2024.03.21
- 2020年3月10日
- リレーコラム
#1 「インダストリー4.0」とは?
清水 一之 明治大学 経営学部 教授製造業における製造のプロセス・イノベーション
最近、「インダストリー4.0」という言葉を耳にする人も多いのではないでしょうか。これによって、産業の劇的なパラダイム・シフトが起こるという議論もあり、注目されています。しかしながら、その本質を理解している人は少ないのではないかと思います。
「インダストリー4.0」とは、直訳すれば「産業4.0」ですが、「第4次産業革命」と訳されています。人類史上4回目の産業革命ということです。そうした捉え方には異論もありますが、要は、産業、特に製造業における製造のプロセス・イノベーションだということです。
例えば、工場の生産プロセスには様々な利害関係者が関わっています。
工場の経営者や労働者をはじめ、生産システムを考える人たち、製品に関わる様々なサプライヤーや、なにを作るかを企画する人たちもいれば、そこに情報をフィードバックするマーケティング関係者や、できた製品を販売する市場関係者もいます。
そうした様々なステークホルダーや、ステークホルダーたちが持っている機能や情報をデジタル・ネットワークで繋ぎ、生産効率やコストパフォーマンスを向上させようということなのです。
もともと、ドイツのIT企業の社長であるヘニング・カガーマンが2011年に提唱した概念です。
カガーマンは企業のエンタープライズ・リソース・マネジメントを推進する統合型ソフトウェアを開発していました。
それは、企業の様々な部署や組織を横断的に把握し、経営資源の活用を最適化するという経営業務をサポートするソフトウェアなのですが、要は、それを一企業内にとどまらず、外部(業界)まで、すべてのステークホルダーを取り込んで製造過程に革新を起こすことを目指すのが、「インダストリー4.0」なのです。
というと、最近、日本でもよく知られるようになったIoTのシステムを思い浮かべる人も多いと思います。確かに、デジタル・ネットワークによって集積したビッグデータを活用するという点で同じです。
しかし、「Internet of Things(IoT)」の概念は広く、あらゆるコト・モノと人を企業を通じて汎用的な技術によってネットワーク化し、その中で新たな付加価値を創出するのに対して、「インダストリー4.0」は、比較的利幅の大きなBtoB(業者間取引)を対象としており、専門性の高い機械同士をネットワークしつつ、モノづくりのプロセスを革新するのです。
それでは、製造業の関係者はともかく、一般の消費者である私たちの生活に、それはどのような影響を及ぼすのでしょうか。
次回は、「インダストリー4.0」によってなにが変わるのかについて解説します。
#1 「インダストリー4.0」とは?
#2 「インダストリー4.0」でなにが変わるの?
#3 「インダストリー4.0」によって疎外される人たちがいる?
#4 「インダストリー4.0」をより良い革命にするには?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。