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近年では、事業計画が秘密裡に進行することは、まずない

公共事業に反対し続ける人に対して土地の強制収用などが行われた、という報道を目にすると、自分の身近で公共事業があった場合、同じ目に遭うかもしれないと思う人も多いかもしれません。

確かに、自分が住んでいる土地に道路が通るなどと、降って湧いたように知らされたら、パニックになるし、怒りもわくでしょう。しかし、実は、その心配は、まずありません。

公共事業は、まちや地域はどうあるべきかというビジョンから始まり、そのための課題認識によって事業計画が立てられます。それは、バイパス道路であったり、駅前の再開発であったり、住民からの防潮堤が必要という声で計画が立てられることもあります。

そして、粗々の計画が作られた段階で、それは、ほとんどの場合、公開されます。計画が秘密裡に作られ、そのまま進行し、住民には、決まった計画が降って湧いたように知らされる、などということは、近年ではまずありません。ただ、計画が粗々の段階での公開方法は決められていないので、市役所のホームページに載るのか、広報に掲載されるのか、あるいは、国土交通省のホームページに載るのか、それはわかりません。

しかし、情報が公開されるのは、まず間違いありませんし、それにともなって、市民から意見を聞く市政モニターや、まちづくりワークショップなどといわれる意見交換会が行われたり、公報や計画を知らせるニュースレターなどにアンケートはがきを付け、意見を募ることもあります。

以前のように、秘密裡に進めた計画が漏れ、反対派が生まれて紛糾する、というようなことを行政としては避けたいのです。むしろ、早い段階で計画を公表し、積極的に市民や住民の意見を吸い上げ、賛成意見や反対意見にも対応しながら計画を詳細化していくのが、近年の公共事業の進め方です。

つまり、あなたの身近で公共事業が行われる計画があったとき、その目的や内容を確認して納得がいかなければ、そうした意見をあげることができるし、それはとても大切なことなのです。

逆に、それをせずに、多くの住民が納得したり妥協点を見つけて決定に至った事業計画に、それから反対や異議を唱えても、変更や見直しがされることはとても難しくなるのです。

次回は、市民の公共事業への参画について解説します。

#1 公共事業はどうやって進められるの?
#2 市民が公共事業の計画に参画できるの?
#3 公共事業の補償って、お金を払うだけでしょう?
#4 これからの公共事業はどうなるの?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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