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植物工場にとっての理想的な光源をめざして – 植物工場の生産コストを低減するという課題に光源の開発で貢献。 –

明治大学 理工学部 電気電子生命学科 准教授 三浦 登

植物工場にとっての理想的な光源をめざして

植物工場には人工光が不可欠

 私の専門分野は光物性・光デバイス、電子材料などです。光機能性薄膜を用いた電子デバイスの研究を中心に、近年は、エレクトロルミネッセンス素子を用いたフラットパネルディスプレイ用の材料・デバイス開発、照明用光源や太陽電池などの薄膜光‐電気変換素子の研究に取組んでいます。
 今回の植物工場のプロジェクトで私が担当しているのは、植物工場の普及拡大を図る上で課題となっている人工光の研究開発です。
 植物工場は次世代の栽培プラントとして拡大が期待されています。しかし、光源に人工光のみを用いた完全閉鎖型の植物工場では、電力コストが生産される農作物の価格に跳ね返っているのが現状です。そのため植物工場の野菜は一般的に高価ですが、無農薬で栄養価が高く、食感が良いなど、露地栽培の野菜に比べて付加価値も高いとされています。この付加価値を生かすべく、いかに光源のコストを低減するか。生産する際のコストを削減し、単価を下げることや、ランニングコストを抑えるために低消費電力で長期使用に耐えられる光源を開発することが第一の課題です。

既存の光源のなかから活用

 もう一つの課題は植物にとって都合のいい光の質を実現することにあります。植物の成長は光量に強く依存するため、収量を稼ぐには一般照明などと比較して強い光源が必要であることがわかっています。
 現在、実用化されている植物工場の光源には主に冷陰極管(CCFL)が利用されています。これは、もともと薄型ディスプレイ、特に液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトとして開発されてきたものですが、白熱電球に比べ光源からの熱輻射が非常に小さく、植物栽培に適した温度を維持するために好都合です。光源の発熱が小さいと、光源を植物に近づけることが可能であり、植物に照射する光量を稼ぐことができます。また、施設を小型化することや、同じスペースならば、より多くの栽培棚を設置できるという意味でも大きなメリットがあります。
 CCFLと並んで期待されている発光ダイオード(LED)は、青色、赤色など特定の色を光らせることができるため、野菜に与える光をコントロールしやすく、成長や風味、食感、栄養価などを向上させることができます。しかし、いまのところ高価であることが障壁になっています。高価であるのは技術的な問題と、希少資源を使っていることが原因ですが、このようなネガティブな要素を解消したLED光源の開発も視野に入れておく必要があるでしょう。

既存の光源のなかから活用

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植物工場の光源として現在主流となっている冷陰極管(CCFL)。
 もう一つの課題は植物にとって都合のいい光の質を実現することにあります。植物の成長は光量に強く依存するため、収量を稼ぐには一般照明などと比較して強い光源が必要であることがわかっています。
 現在、実用化されている植物工場の光源には主に冷陰極管(CCFL)が利用されています。これは、もともと薄型ディスプレイ、特に液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトとして開発されてきたものですが、白熱電球に比べ光源からの熱輻射が非常に小さく、植物栽培に適した温度を維持するために好都合です。光源の発熱が小さいと、光源を植物に近づけることが可能であり、植物に照射する光量を稼ぐことができます。また、施設を小型化することや、同じスペースならば、より多くの栽培棚を設置できるという意味でも大きなメリットがあります。
 CCFLと並んで期待されている発光ダイオード(LED)は、青色、赤色など特定の色を光らせることができるため、野菜に与える光をコントロールしやすく、成長や風味、食感、栄養価などを向上させることができます。しかし、いまのところ高価であることが障壁になっています。高価であるのは技術的な問題と、希少資源を使っていることが原因ですが、このようなネガティブな要素を解消したLED光源の開発も視野に入れておく必要があるでしょう。

植物の成長に最適化した光源とは

 植物の成長にとって効率の良い光量はどの程度なのかを見きわめることも効率を高める方法のひとつです。また、植物は光合成で二酸化炭素を吸収し、かわりに酸素を排出するわけですが、酸素を出している時間は光を必要としないため、例えば従来よりも短い時間領域までコントロールして、植物に間欠照射を行えば省電力化と成長の促進の両面に役立つと考えられます。
 しかし、CCFLもLEDも、あくまで既存の光源であり、植物の成長に対して最適化されているわけではありません。植物工場に用いる光源として充分な光量を持ち、なおかつ低消費電力な光源が実現できれば、おそらく住宅やオフィスの照明もこれにとって替わるようなインパクトを持つに違いありません。これまでの技術の転用ではなく、根本的な発想から新しい光源を開発することは、研究者として挑みがいのあるテーマです。

環境問題、食料問題へのアプローチ

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興味の中心は常にモノづくり。日本にとってモノづくりは生命線だと思う、と三浦准教授。
 私たちにとって差し迫った問題とは持続可能性、つまり子々孫々まで地球の環境を維持したまま手渡すことです。なかでもエネルギー問題と食料問題は今後、切実な問題になることが予想されています。しかし、これまで文明の恩恵を享受してきた現代人が、テレビを見ない生活に耐えられるか、携帯電話やパソコンを捨てられるか、と言えば、それは不可能に近い。ではどうするか。例えば、超低消費電力の技術があればどうでしょう。その技術を応用すると、1カ月間まったく充電をしなくても使えるスマートホンといったものが実現するとしたら、それは市場で強い競争力を持つと同時に、大きな意味でエネルギー問題の解決にもつながるはずです。また、食料問題に対しては、場所を選ばず、計画的に生産できる植物工場がその解決策のひとつになるかもしれません。
 いまという時代は、多くの人が満たされていて、心から欲しいと思えるものを見つけることが難しくなっています。そうした中では、いたずらに世の中のニーズを追うのではなく、人々の生活が豊かになって、幸福を感じるためにはどうすればいいのかを真剣に考えなければならないと感じています。本当の意味で社会の役に立つモノづくりは、その先にあるのではないでしょうか。植物工場の実用化というテーマに関しては、その点で大きな意義を感じています。

多様な学問分野の知を持ち寄る

 もちろん現実に課題を解決するのは容易ではありません。超低消費電力の実現には100年かかるかもしれないし、絶対に超えられない壁があるかもしれない。しかし、最初から無理だと言っては何もはじまりません。明治大学植物工場基盤技術研究センターには、植物工場の生産効率の向上と生産コストの低減化という基本コンセプトがありますが、エネルギーをとことん効率良く利用する栽培システムの開発に向けて、農学、工学などさまざまな学問分野が連携することによって、新たな発想が見つかることも充分期待できるはずです。
 今後は、葉の厚さ、葉の光学的性質、電子顕微鏡による表面形態観察、味覚など、系統的に評価・解析を進め、植物育成のメカニズムを明らかにし、より美味しい植物野菜を、低コストかつ短期間で育成するための光源開発を進めていきます。また、光の成分や光の当て方、青色と赤色以外に何が必要か、薄い、濃い、など植物にとって都合のいい光とは何かを探ることもテーマの一つです。
 植物工場内の壁などに照射され植物に吸収されずに捨ててしまう光や、光源から放出される熱をリサイクルすることも、効率向上の手段の一つとして検討したいと考えています。

掲載内容は2013年3月時点の情報です。

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