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ホルモンはどのようにして体に効くのだろうか?

明治大学 農学部 生命科学科 教授 戸村 秀明

研究最前線 magazine49

ホルモンとは

 「ホルモン」と聞くと、皆さんはどのようなことを思いうかべますか。「ホルモン焼き」や「ホルモンバランス」などを思いうかべる方も多いのではないでしょうか。このように私たちにとって「ホルモン」は親しみのある言葉です。では「ホルモン焼き」や「ホルモンバランス」の「ホルモン」に対して、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。「私たちの体を元気にするもの」、「私たちの体の機能を正常に保つもの」といった感じでしょうか。

 細胞情報制御学研究室では、ホルモンがどのようにして体に効くのかを研究しています。「ホルモン焼き」(牛や豚の臓物を細かくして焼いたもの)から想像できるように、私たち人間だけでなく家畜動物を含む多種多様な生物も「ホルモン」を持っています。「ホルモンがどのようにして体に効くのか」の研究は、私たちを元気にして健康を保つだけでなく、家畜や希少動物の健康維持や繁殖にも役立つ可能性を秘めています。

ホルモンが効くには受容体が必要

ホルモンがはたらくかどうかは受容体が決めている
図1:ホルモンがはたらくかどうかは受容体が決めている
 ホルモンは体の中の特定の組織で必要時に作られ、血流にのって全身に運ばれます。そしてホルモンは、機能を調節したい特定の組織にのみはたらきかけます。その結果、私たちの体の機能が正常に保たれます。ここで疑問が生じます。ホルモンはいかにして自分がはたらきかけるべき組織を見つけているのでしょうか。その答えが受容体です。受容体は図1に示すように、ホルモンを受け取るために細胞が用意したポストです。ホルモンのはたらきかたは、私たちが日々利用している郵便システムと似ています。ホルモンが手紙で受容体がポストといったところです。しかしながら郵便システムと決定的に異なる点があります。それは手紙であるホルモンには、どこに届けてほしいという「あて名」が書かれていないことです。それでも誤りなくホルモンが特定の組織に届く理由は、受け手である組織の細胞に用意されたポスト(受容体)にその秘密があります。ポストである受容体が受け取るべきホルモンの形をしっかりと認識し、それ以外の形のものを受け取らないからです。

 このように「ホルモンがどのようにして体に効くのか」の問題は、受容体がどのようにホルモンを認識して細胞にどのような応答を引き起こさせるのかを調べることに帰着します。

細胞情報制御学研究室での研究

図2:受容体がホルモンを認識して細胞応答を引き起こす様子
図2:受容体がホルモンを認識して細胞応答を引き起こす様子
図3:受容体がホルモンを認識して細胞の形が変化する様子
図3:受容体がホルモンを認識して細胞の形が変化する様子
 細胞情報制御学研究室では、Gタンパク質共役型受容体と呼ばれる受容体に着目して研究をしています。この受容体はヒトでは約800種類ほど存在すると言われています。この受容体の中には、どのホルモン(手紙)を受け取るのかまだ明らかになっていないものや、特定の組織の機能をどのように調節するのかがわからないものがたくさんあります。私たちはこれらの点を明らかにすべく研究を行っています。

 図2、3は研究の一例です。図2では受容体がホルモンを認識して細胞応答を引き起こす様子を示しています。写真はホルモン刺激で細胞の光り方(応答)が変化する様子を、また下の曲線はその変化をグラフにしたものです。

 図3は受容体がホルモンを認識して細胞の形が変化する様子(光が強くなる)を示したものです。この形の変化は細胞が動き回る能力を反映しているものと考えられており、がん転移のモデル系としてその解析がなされています。

最後に

 図1のイラストは、研究室の学生が描いてくれたものです。また図2、3の結果も研究室の学生たちの実験により得られたものです。細胞情報制御学研究室での経験を生かして、学生たちが自らの将来を切り開き、また社会に貢献できる人となっていくことを期待しています。学生たちが思う存分に研究ができる環境をサポートしてくださっている保護者や関係者の皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。

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