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活気のあるまちへ、学生の視点で区の魅力を紹介 – 住民の方と学生との、世代を超えたコミュニケーションが新しい発送を生むことに、期待しています。 –

明治大学 商学部 教授 小川 智由

活気のあるまちへ、学生の視点で区の魅力を紹介

連携テーマ
東京都 千代田区
まちと大学のつながり

Summary
● 学生の発意からはじまったフリーペーパーが、地域活性化と学生の学びの場に。
● 学生が自主的に活動を行っている「学生団体」が、地域の新たな力になる可能性も。
● オープンキャンパスでの反響をみると、地域連携による活動は、受験生にも関心が高い。

フリーペーパーで千代田区の商業振興に協力

学生は区の方々との打ち合わせや、お店の方への企画説明、広告効果の説得などを通して社会人としてのマナー、ルールなども学びます。
学生は区の方々との打ち合わせや、お店の方への企画説明、広告効果の説得などを通して社会人としてのマナー、ルールなども学びます。
 これまで私のゼミで、さまざまな自治体や地域と連携して研究や教育活動を行ってきましたが、最も長く続いている取り組みが、千代田区との連携事業です。ここではゼミの学生が千代田区の商業施設を紹介するフリーペーパーをこれまで8年間にわたって年1回、毎年10月に発行しています。千代田区をもっと知ろう、という意味の「Chiyomo(チヨモ)」というタイトルになってからも5年目を数えるこのフリーペーパーは、ゼミの学生たちが企画構成から広告の営業、店舗の取材、執筆・編集、制作会社とのやり取りまで、すべて自分たちの力で行って作成しています。
 そもそものきっかけは私のゼミの13期生(今期は23期)がゼミ本来のテーマであるマーケティングを学びながら、ゼミ生同士の理解を深め、さらに、駿河台キャンパス周辺の街をもっと知ろう、という3つの目標を立てたことに始まります。彼らは、その方法として御茶ノ水と神保町のお店を紹介するフリーペーパーを手づくりで制作し、自費出版しました。これが学内外に好評を博したため、商学部のプロジェクトとして増刷したところ、千代田区長の目に留まり、区内の商業振興と地域の活性化に力を貸してほしいと依頼されるにいたったのです。そして千代田区から予算の一部を助成していただき、残りの費用はマーケティングの実践を兼ねて、学生が広告収入から捻出するという形も取り入れたりして、その発行が定着しました。
 「Chiyomo」では千代田区がさらに活気ある街になるように、という区の狙いから、千代田区のスタンプカード事業に加盟している店舗を紹介しています。また、学生の視点で千代田区の魅力を紹介する特集記事も設け、この冊子を手に取った方々が千代田区に興味を持ってもらえるように、毎年趣向を凝らして制作しています。
 冊子づくりのプロセスで、学生たちはマーケティング的な視点からの企画内容の検討、広告の効果測定方法など、さまざまな課題に直面し、その都度、大学で学んだ知識を実際に活用する機会を得ています。
 フリーペーパーの取材は夏の暑い盛りに行われます。広告出稿を依頼しに行った店舗の方から「あそこの店にも行ってみるといい」とご紹介いただいたり、冷えた飲み物をごちそうしていただいたり、フェイスtoフェイスの触れ合いが得られることも学生にとっては新鮮な体験のようです。彼らがやがて大人になって、この街を訪れるときも、「Chiyomo」の活動の中で得た地元の方々とのつながりはきっと消えることはないでしょう。

学生の社会的な活動を紹介する「学生団体メッセ」を開催

初日は来賓をはじめ、参加団体の代表や小川ゼミの学生らがステージに上り、今回のイベントの主旨や研究テーマなどを発表した。
初日は来賓をはじめ、参加団体の代表や小川ゼミの学生らがステージに上り、今回のイベントの主旨や研究テーマなどを発表した。
「学生団体メッセ」に展示された各団体の活動を紹介するパネル。熱心に活動を紹介する様子が見られた。
「学生団体メッセ」に展示された各団体の活動を紹介するパネル。熱心に活動を紹介する様子が見られた。
 また、私のゼミと株式会社柳屋本店※1との産学連携プロジェクトとして、2012年6月に発足した「柳屋広報明治大学支局」では、ゼミ生が学生ならではの取り組みを行いたいと希望したことから、千代田区を拠点に「学生団体」を紹介するイベントを行うことになりました。学生団体という言葉は耳慣れないかもしれませんが、東日本大震災の復興支援活動や国際ボランティア、ビジネスコンテストなど、社会的なメッセージを掲げて、複数の大学の学生が一緒になって活動に取り組む点が、従来のサークルと異なる特徴です。近年、こうした学生団体の活動はますます活発になっていますが、社会的にはまだ認知度が低く、学生たちの「社会を支えたい、変革したい」という意思と活動を広く知っていただくことを目的に、2013年10月淡路町の「ワテラス コモンホール」※2において「学生団体メッセ」※3を開催しました。
 明治大学商学部と株式会社柳屋本店の主催・運営による3日間のイベントは、参加学生団体数27を数え、各種の講演やパネル展示などで盛況のうちに幕を閉じました。
 この企画を進める中で気づいたのは、千代田区としても、学生団体の社会的な課題の解決に向けた活動に関心があり、その取り組みをもっと知りたいと願っていたことです。他の地域と同様、千代田区も高齢化が進んでおり、治安や福祉の問題など、いろいろな課題を抱えています。しかし、そうした課題に機動的に対応するには、区と大学といった組織同士の連携は不向きな場合もあります。その点、学生団体と住民とが直接結びつく仕組みが構築できれば、事務的な手続きなどの時間を短縮し、よりスピーディに取り組みを開始できるという期待があります。また、学生にとっても活動を通して、現実の問題を知り、成長に役立てることができるでしょう。そうした発想から、学生たちの地域連携は、より密度の濃い人と人のつながりへ、さらに深化していく兆しを見せています。

地域連携を取り入れた独自の教育プログラムも

最新号を担当した22期小川ゼミのゼミ長を務める、商学部2年の佐藤宏哉さん。歴代のフリーペーパーはどれも個性豊か。
最新号を担当した22期小川ゼミのゼミ長を務める、商学部2年の佐藤宏哉さん。歴代のフリーペーパーはどれも個性豊か。
 大学の授業においても、社会との密接な連携の中で学ぶアクティブラーニングが重要性を増しています。私の所属する明治大学商学部でも、独自の教育プログラム「地域・産学連携による自主・自立型実践教育」を導入し「特別テーマ実践科目」として地域連携などに積極的に取り組む授業科目群を新設しました。震災復興や地域の活性化、マーケット分析、新事業開発やコンサルティングなど、テーマはさまざまですが、学外との協力関係を活用しながら、社会の課題を読み解き、その解決策を考え、実行し、成果を報告するというプロセスを実践的に体験できることが特徴です。これまで教員が個別にゼミ単位で行ってきた活動なども生かしながら、より多くの学生が地域との連携に力を発揮する機会を広げています。
 学校が作る問題には、ほとんど先に答えが用意されています。成績もその答えにどれだけ近いかで決まるため、学生も用意された正解を探す思考方法に慣れています。しかし、ご紹介したような課題解決型のプロジェクトには、当然のことながら絶対の正解というものはありません。既にある事例に学ぶのではなく、ゼロから考え、信念のもとに形にして、最後にそれが達成できたか検証する。その過程では、仲間と議論になったり、何度もやり直したり、試練も多いでしょう。ですが、学生時代に人と協調しながら困難を乗り越える経験をした学生は、社会に出てからも大きなギャップを感じずにすむでしょうし、周りを説得してでも自分が良いと思ったことを貫く逞しさを身に付けることができるのではないでしょうか。
 オープンキャンパスでも、学生が、地域の中で学んだ体験談を語る場がありますが、高校生や受験生の反応を見ていると、実践的な学びへの関心が高いことがわかります。大学にはさまざまな専門分野を持つ教員がいて、イベントなど大きなパワーが必要な時には学生の力が役立ちます。地域の方の発想をもとに、大学の有形無形の資産を上手に活用していただくため、地域の方々が何かのときに声をかけやすい、地域と大学や学生とのつながりの形を模索していきたいと考えています。

※1 1615年、江戸日本橋に創業した化粧品メーカー。@コスメ大賞を受賞したヘアオイル「あんず油」を筆頭に、頭髪化粧品、育毛剤などを世に送り出している。
※2 「ワテラス」は淡路小学校(1993年閉校)の跡地(千代田区神田淡路町)にオープンした複合施設。まちづくりにおける学生との協働が活発に行われている。
※3 学生団体メッセ特設サイト http://www.gakuseidantai.org/

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