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ことばによるバイアスに気がつく方法とは

堀田 秀吾 堀田 秀吾 明治大学 法学部 教授

ことばの使い方やスピーチ術が注目されています。確かに、言い方ひとつで伝わり方がまったく変わってしまうということがよくあります。それは、コミュニケーションの問題だけでなく、人の人生に大きく影響することもあります。ことばのもつ力をあらためて考えてみましょう。

ことばは世界を文節化している

堀田 秀吾 私たちは、世の中の事物や出来事を、見たまま、ことばで伝えられると思いがちです。しかし、実は、それは大きな思い違いです。

 ことばは、世界をなんらかの形で切り取って伝えることしかできません。それを「文節化」と言います。

 人はそれぞれ恣意的に文節化を行っており、だから、切り取られた世界はひとりひとり違うことになります。とは言っても、世界はひとつなのだから、それを表現することばが違うだけだろう、と思うかもしれません。

 しかし、人は、ことばによって世界を認識しています。すると、人がことばを使う、つまり、世界を文節化することによって、みんなが同じひとつの世界を見ているつもりでも、それぞれ違う世界を見て、違う世界に生きていることになるのです。

 例えば、よく知られている話として、民族によって虹の色の数が違うことがあります。日本は7色ですが、アメリカは6色ですし、ドイツは5色です。アフリカのある部族は8色ですし、南アジアや南半球には2色の部族もあります。

 もちろん、それぞれの地域で見られる虹が違うわけではありません。まったく同じ虹を見ていても、色を文節化することばが違うのです。実際、虹を2色で捉える部族の人たちに、その中間の色の名前を教えると、彼らは虹を何色かで捉えられるようになります。

 同じことは、私たちの身の回りでも日常的に起こっています。コンプライアンスとか、○○ハラスメントなどということばを知ることによって、私たちは世界の捉え方が変わりました。

 もちろん、法令順守ということばは以前からありましたが、コンプライアンスと言うことによって、その状況を特定化して捉えることができるようになったのです。

 一方で、人によって文節化が異なることによって見ている世界が違うということは、お互いが見る世界の間にズレや歪みがあるということです。

 そのズレがコミュニケーションの齟齬を生んだり、あるいは、他者にとって潜在的なバイアスとなり、無意識の偏見を形成したり、さらに、記憶を変形させることもあるのです。

 それが、例えば、裁判の場で行われると、大変なことになります。

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