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現代の社会的課題を解決する糸口は、中庸の欲張り!?

本所 靖博 本所 靖博 明治大学 農学部 准教授

近年、社会的課題の根源には二極化や分断、格差があると言います。その原因のひとつは資本主義や市場経済ですが、私たちひとりひとりが、他者に対する理解や思いを馳せることが希薄になっていることも大きいと言います。では、そうした課題を解決する糸口はあるのでしょうか。

便利な生活の追求から生まれた分断

本所 靖博 近年、心にゆとりがなく怒りっぽい人が増えていると言われます。また、ネットには、自分の憂さを晴らすためのような誹謗中傷の書き込みも多く見られます。

 こうしたイライラを抱えている人の多くは、自分の悩みや不満、困りごと、あるいは病気のことなどを自身だけで抱え込み、助けを求めたり、打ち明けられる人がいないのかもしれません。

 特に、都会は利便性や効率性を実現することを中心に設計されていて、そこに住む人々は、他者との関係性が希薄でも生活していけるようになっています。

 しかし、イライラやストレスを抱えてメンタルダウンする人が増加しているのは、利便性や効率性だけでは人は快適に生きていくことが難しいことを表しているのではないでしょうか。

 また、利便性や効率性を追求すると、人は物事を単純に捉え、視野を狭くしていくようになります。多角的なものの考え方は面倒くさくなるからです。

 実際、今日では、都会と田舎、やまとまち、食べる人と作る人、生産者と消費者など、様々な関係性がブラックボックス化しています。その方が利便性も効率性も上がるからです。

 例えば、都会に暮らす人も農作物や畜産物を毎日食べます。でも、それを、だれが、どうやって作り、どうやって自分の食卓に上がっているのか、理解している人、理解しようと思う人も少ないと思います。それは面倒くさいことで、効率的ではないのです。

 お金さえ払えばなんでも食べられる。それは、便利で効率的な社会です。

 でも、それを進めたことによって、作る人との関係性が見えなくなり、そうしたことが、私たちの孤立化を招いているとしたら、そして、それがメンタルダウンの要因になっているとしたら、そうした状況を変えることは、私たち自身を守ることにもなるわけです。

 では、そのためにはどうしたら良いのか。社会構造によって関係性がブラックボックス化されているのであれば、自分から接点を持ってみることです。

 例えば、近年、都市近郊などで農業体験ができる農園や、貸し農園が増えています。そういったところで、実際に農業を体験してみると、いろんなことが見えたり、わかったりしてきます。

 それは、楽なことや楽しいことばかりではないと思います。むしろ、農作業とは面倒くさいことや手間のかかることばかりです。

 でも、そうやって収穫したものが、スーパーで買うものよりも格段に美味しいこともわかると思います。

 いままでブラックボックスだったものが少しでもわかるようになると、そこに、心惹かれるなにかを感じることもあると思います。

 だからといって、もちろん、便利で効率的な生活をすべて放棄する必要はありません。その心惹かれるものを、普段の自分の生活や生き方に取り入れれば良いのです。つまり、良いとこ取りをする欲張りをするのです。私は、それを中庸と捉えています。

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