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里山の生物多様性を持続させるために必要なことは

倉本 宣 倉本 宣 明治大学 農学部 教授

樹木が病気になることが近年増えてきています。特に最近首都圏に広がってきて、猛威をふるっている樹木の病気に「ナラ枯れ」があります。ナラ枯れは直接的には菌が樹木の水あげを阻害して起こります。その菌はキクイムシという甲虫の一種カシノナガキクイムシによって運ばれます。ナラ枯れはどんぐりがなるコナラのなかま、しかも大きな木に集中して発生します。なぜ、大きな木に集中するのでしょうか。

太く大きいコナラにはキクイムシが集まる

倉本 宣 皆さんは、今年の真夏の時期に、大きな木の葉が赤茶色になっているのを見ませんでしたか。それは、「ナラ枯れ」かもしれません。

 「ナラ枯れ」は、落葉樹のコナラやクヌギ、さらに、常緑樹のシラカシやマテバシイなど、どんぐりのなるコナラの仲間に発生します。

 植物は、根が吸い上げた水が葉の気孔から蒸散し、葉の表面から蒸発しますが、ナラ枯れに感染した樹木は水あげができなくなって葉に水がなくなって枯れてしまうのです。

 この「ナラ枯れ」は2000年くらいから西日本や北日本で拡がり始め、最後になった首都圏でも、数年前から見られるようになってきています。

 カシノナガキクイムシは遺伝的に多様なので、在来種だと考えられています。クリタマバチのような外来種ではありません。最近になって被害が発生したのは、雑木林に対する人間のかかわりが変わったからだと言われています。

 昭和30年代に日本ではプロパンガスが普及し、薪や炭が使われなくなりました。それまでの雑木林は私の腕くらいの太さで伐採されていました。それより太いと、薪や炭にするのに太すぎて割らなければならないからです。コナラやクヌギなどの高木の樹高も数メートルでした。プロパンガスの普及は急激だったので、雑木林は一斉に放置されるようになりました。昭和50年代には樹高は10メートル、そして令和になると樹高は20メートルに達しています。

 カシノナガキクイムシは集合フェロモンを出して、大木に集まるマスアタックという習性があるので、雑木林のコナラやクヌギが大木になったのでナラ枯れが猛威をふるうようになったのです。

 ナラ枯れの根本的な対策は、雑木林を皆伐更新(伐採して、切り株から出るひこばえを育てて若返らせること)することです。それは15年以上前に確立された学説です。生態系に配慮するなら、数百平方メートルずつ小面積皆伐更新を行うのがよいとされています。しかし、現実には小面積皆伐更新はほとんど実施されておらず、対症療法的に、ナラ枯れにかかった樹木からカシノナガキクイムシが飛び立たないようにしたり、ナラ枯れで枯死した樹木だけを伐採したりすることにとどまっています。

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