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お金について学ばないことで失う機会は大きい

沼田 優子 沼田 優子 明治大学 国際日本学部 特任教授

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欧米の先進国やアジアの成長国などと比べ、日本は個人投資が極端に少ない国です。皆保険制度や年金制度が充実している日本では、個人が資産運用に精を出す必要がないとも言われてきました。しかし、少子化が進み、人生100年時代と言われるいま、状況は変わってきています。

アメリカにもあった、投資せざるを得なくなった社会の変化

沼田 優子 日本人は貯蓄好きで、投資は嫌いだと言われます。実際、日本では、個人資産のうち預貯金が約52%で、投資信託や株式、証券などによる運用資産は約15%であるのに対して、アメリカは預貯金が約14%で、運用資産が約51%というデータがあります。ちょうど正反対なのです。

 それは、アメリカ人が投資好きだからなのかといえば、そうとも言えません。

 実はアメリカ人もかつて、いまの日本の家計と同じように預金偏重で、投資はギャンブルだと思っていたのです。

 ところが、80年代から、アメリカ社会に大きな変化が起こります。Japan as Number Oneと言われ、日本企業が世界的に躍進していた頃です。

 特にアメリカでは、日米貿易摩擦が大問題となるなど、企業が苦境に陥ったのです。当然、雇用も不安定になり、それまでは、アメリカ人にとっても大企業に勤めていれば人生安泰だったライフプランが、大きく崩れることになったのです。

 この間、アメリカでは、自分で積み立てる、自助努力型の年金が徐々に従来型の年金にとってかわるようになり、資産運用についての教育が進みます。すなわち、お金の問題を国や企業に任せ放しにしていては辛くなるのは自分自身であり、備えのために自分にできることはなんなのか、その選択肢を見える化するようになったのです。

 しかし、選択肢がそれほどたくさんあるわけではありません。年金への毎月の拠出額を増やすか、受取額が少なくても困らないような生活にシフトするか、引退年齢を遅らせるか、早くから積立を開始して、積極的な資産運用をするかくらいです。結局、アメリカ人は、投資せざるを得なくなったのです。その結果が、今日のデータになっていると私は考えています。

 翻って、日本の社会を見ると、戦後の高度経済成長期から、Japan as Number Oneと言われ、バブル景気にも沸き立った1980年代まで、日本人は自らお金のことを考えなくても、給料から自動的に天引きされて様々な社会保障や年金を享受できました。余ったお金はそのまま預けておけば金融機関が利息をつけてくれるのですから、それで充分だったわけです。

 ところが、1990年代に入ると、バブルが崩壊して低成長時代に入り、さらに、少子高齢化が大問題となってきました。

 それまで、お金のことは国や企業に任せておけば良かったのですが、その制度設計は、経済成長があり、終身雇用があり、生産年齢人口が高齢者を支えていくことが前提となっていました。

 バブル崩壊以後、これらの前提が崩れたのですから、もはや、その制度はいままでのように維持できるわけがありません。

 つまり、1980年代から、アメリカ人が投資せざるを得なくなったように、いまの私たちもなんらかの対策を講じなければならない状況にあるのです。でも、データを見る限り、そうした変化はありません。なぜなのでしょう。

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