明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

幻想的に光る「夜光雲」が地球温暖化のメカニズムを解く

明治大学 理工学部 准教授 鈴木 秀彦

皆さんは「夜光雲」という言葉をご存じでしょうか。高度85km付近という超高層にできる雲のことで、北極や南極付近の高緯度でしか見られず、一般にはほとんど知られていませんでした。ところが、近年、この夜光雲が北海道などで撮影されたのです。その理由を突きつめていくと、地球環境変動の問題に繋がっていることがわかります。

気象の予測から地球環境変動の解明にも繋がる大気物理研究

鈴木 秀彦 私たちの研究室では、大気物理研究を行っています。あまり聞き慣れない分野だと思いますが、その成果は、身近なところでは天気予報精度の向上などに活かされています。

 というのも、現代の天気予報は、様々なデータを基に、コンピュータの中に地球の模型のようなものを作り、そこに、大気の観測データを入力し、今後の気象がどうなるかを模型上で計算して出すという仕組みで行っています。

 なので、自然をより忠実に再現する模型を作るためにも、また、正確な気象予測を出すためにも、大気の観測データは大変重要になるのです。

 そのため、気象庁は無人の気象観測拠点を日本中に設けてデータを収集しています。

 こうした下層大気の観測データは、明日や明後日の天気予報を出すために有効ですが、一方で、高層大気の観測データは、地球環境全体の変動のメカニズムの解明にも繋がります。

 例えば、北極や南極の上空にオゾンホールが発生することは以前から問題になっています。原因は、フロンガスなどの人為起源のオゾン破壊物質によるものだということが、いまでは有力です。

 だとすると不思議なのは、オゾンの破壊が、人が定住していないような極域の上空で起きていることです。

 実は、フロンガスなどは放出されてすぐにオゾンを破壊し始めるのではなく、時間をかけて徐々に破壊していくことがわかっています。

 また、地球の高層域には、地球全体を巡る大きな大気循環があることもわかっています。

 つまり、地球上の各所で放出されたオゾン破壊物質はこの大気循環に乗って運ばれ、終着点である北極と南極に集まり、そこで、ゆっくりとオゾンを破壊しているということです。

 すなわち、高層大気を観測することによって、極域に地球全体のデータが集約されてくるようなこともわかってくるわけです。

 私たちの研究室では、この高層大気や超高層大気を中心に研究を行っていますが、近年、従来は、やはり極域でしか見られなかった夜光雲という現象が、北海道などの中緯度の地域でも見られることがわかりました。

 それはなぜなのか。現在、夜光雲の発生メカニズムと、地球環境変動との関連について注目し、研究を進めています。

社会・ライフの関連記事

所有者不明土地の解決策はサブスクリプションにある!?

2020.3.25

所有者不明土地の解決策はサブスクリプションにある!?

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 片野 洋平
公文書の隠蔽や改ざん、忖度。防ぐのは我々のシビリティ

2020.2.26

公文書の隠蔽や改ざん、忖度。防ぐのは我々のシビリティ

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 西出 順郎
「自己責任」を押しつける社会に多様性はあるのか

2020.2.12

「自己責任」を押しつける社会に多様性はあるのか

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授
  • 宮本 真也
運動は身体だけでなく頭の健康寿命ものばす

2020.2.5

運動は身体だけでなく頭の健康寿命ものばす

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 加納 明彦
美術品の価格が分かると、国の文化度が上がる!?

2020.1.29

美術品の価格が分かると、国の文化度が上がる!?

  • 明治大学 専門職大学院 会計専門職研究科 教授
  • 池上 健

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.03.25

所有者不明土地の解決策はサブスクリプションにある!?

2020.03.18

幻想的に光る「夜光雲」が地球温暖化のメカニズムを解く

2020.03.11

新しい価値を創出するイノベーションを育てるのは、私たち自身

2020.03.04

がんの検査だけじゃない! ヒ素を無毒化する線虫にも注目!

2020.02.26

公文書の隠蔽や改ざん、忖度。防ぐのは我々のシビリティ

人気記事ランキング

1

2019.02.13

現代人が取り戻せず、潜伏キリシタンが250年間失わなかったもの

2

2019.11.20

ゲノム編集で不妊症の原因を解き明かす

3

2019.12.04

日本独特の発酵食品をつくる麹菌は日本にしかいない!?

4

2019.08.07

生物化学は、「より良く生きるための医療」に貢献する

5

2020.01.29

美術品の価格が分かると、国の文化度が上がる!?

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム