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博物館や美術館には、新たな発見や不思議な出会いが満ちている

明治大学 文学部 准教授 井上 由佳

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2019年9月、京都で国際博物館会議(ICOM)が開催されました。ここで国際的に注目されたのが、博物館のあり方が変わってしまうような、博物館の定義の見直しです。ところが、日本ではあまり大きく報道されることはなく、関心が高まることもありませんでした。なぜなのでしょう。

全国に5700館。世界でも数の多い日本のミュージアム

井上 由佳 日本には、博物館や美術館を含めたミュージアムは5700館以上あると言われています。日本の国土や人口比で見ると、この数は世界的にもものすごく多いと言えます。

 それほど、私たちの身近にあるミュージアムですが、では、来館者や利用者が多いかと言うと、実は、都市部を除けば閑古鳥状態のミュージアムも少なくありません。事前の予約がないと開館しない、いわゆるシャッター・ミュージアムも増えています。

 それは、日本のミュージアムには様々な問題や課題があるからです。

 日本で、博物館というものができたのは明治以降です。それまではまったくなかったのかと言うと、実は、そうでもありません。

 江戸時代には、例えば、神社や寺の宝物庫を開いて美しい仏像や由緒あるものなどを見せる、いわゆるご開帳が盛んに行われていましたし、象やらくだなど、日本にはいない動物を見せる見世物小屋なども人気でした。

 そもそも、人には、珍しいものや美しいものを見たいという欲求や好奇心があり、それに応える興業などは古くからあったのです。

 それが、幕末から明治にかけて行われた遣欧使節によって、「博物館」と概念化されていきます。

 彼らは、ロンドンで大英博物館、パリでルーブル美術館と、各国の堂々たるミュージアムを目の当たりにして圧倒されます。建物のスケールはもちろん、展示品にはその国の文化の高さとともに、国の威信も感じたのです。

 日本も文明国であろうとする以上、ミュージアムはなくてはならないものと考えられました。

 つまり、ミュージアムを日本という国のアイデンティティを示す施設として捉えたのです。そのためには、ご開帳ではダメだということだったのです。

 では、なにを展示すれば良いか。そのきっかけとなったのが、1873年(明治6年)にウィーン万国博覧会に参加したことでした。明治政府は躍起になって日本国中から日本らしいものを集め、日本館に展示しました。

 それを見た外国人たちに注目されたり、人気だったものが、その後の帝室博物館のコレクションとなっていきます。

 つまり、必ずしも、日本人が愛しているもの、日本人が価値あるものと考えるものではなく、外国人が日本らしいと感じるものを展示することで、日本の素晴らしさ、伝統、文化を示そうとしたのです。

 また、現在の東京国立博物館の元となる帝室博物館が当時の内務省によって設立された一方で、文部省が物理や化学教育に貢献するための博物館を設立します。

 これは、当時、学校教育制度が始まりましたが、教員が教えるべき教材の一環としての機能をもたせたもので、教育博物館と呼ばれました。これが現在の国立科学博物館に繋がります。

 このように、明治の早い段階で、国が主導する形で、大きく分けて2系統のミュージアムが誕生したのですが、いずれも、一般の民衆に公開し、楽しんだり学んでもらうという性格のものではありませんでした。

 その状況が大きく変わるのが戦後です。国立のミュージアムとは別に、都道府県や市町村によるミュージアムや、企業による美術館などがどんどん設立されたのです。

 それらは、郷土の歴史や特徴にまつわる資料を展示したり、個人の収蔵物であった美術品を公開するなど、それぞれに個性をもったミュージアムであり、誰もが気軽に来館して鑑賞できるものでした。それが、今日では5700館以上ものミュージアムになっているのです。

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