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2018.10.24

20世紀から21世紀の快適へ、スマートコミュニティが始まっている

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分野ごとの個別の最適化と社会全体の最適化では異なる

福山 良和  これまで、エネルギー消費やCO2排出量の削減は、分野ごとに単独で個別最適化が行われてきました。しかし、SCモデルの観点から見ると、個別の最適化と社会全体の最適化では異なることがわかります。例えば、日本のエネルギー消費やCO2排出量は、夏季においては昼間の午後にピークがあり、冬季においては夜にピークがあります。このピークに合わせて、電力やガスなどのインフラ会社は設備投資しています。ということは、このピークを下げることで、社会的な投資を減らすことができるわけです。すると、そのために必要な取り組みや、技術が見えてきます。例えば、都市の下水処理の分野を見てみると、下水量のピークは朝と夜にあります。処理には一定の時間がかかるため、朝の下水を処理するための下水処理場のエネルギー消費は、昼がピークになります。すると、夏季においては、それは社会全体のエネルギー消費のピーク時間帯と重なってしまうことになります。しかし、下水処理の分野の観点からすると、効率よく処理を行うためには下水処理場に流れ込む下水の量を一定にすることがベストです。下水を下水管に溜めておくと雑菌などが増え、従来の処理スピードでは、処理済の下水を川に放出する際に、水質の基準を保てなくなるからです。ところが、SCの全体最適の観点からすると、昼の電力負荷ピーク時には、下水処理場への流れ込みを一時中止し、下水管に下水を溜めておくことがベストになります。つまり、SC全体最適を考えたときに、下水処理の分野で取り組むべき課題は、下水を下水管に溜めずに素早く処理することではなく、下水管に溜めた下水を、別の時間帯に、時間をかけても適切な水質に処理することであり、その処理スピードをより高めていく技術や機能のレベルアップが求められることになります。

 人類は、ある意味、快適性を追求して社会を構築してきました。環境問題や、CO2の排出を削減することよりも、快適性や利便性を優先させてきたのです。私たちはそれを考え直す時期にきているのだと思います。SCは社会そのものであるため、目指すべき方向は低炭素化だけではありません。人々の幸福をどのように捉え、社会をどう再構築していくのか考えることも、SCのモデル化を進めていくうえで、重要なテーマであると考えています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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