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災害大国日本では、保険が中小企業を救う!?

浅井 義裕 浅井 義裕 明治大学 商学部 教授

保険などの対策だけでは不十分

浅井 義裕 地震保険に加入していれば、復興(売上高などの回復)は順調に進むのでしょうか。筆者達が進めている分析によれば、まず、保険に加入していなかったところと比べると、地震保険に加入していた企業では、確かに復興が進んでいて、保険の有効性は間違いなく認められます。ところが、受取った保険金の額で見ていくと、受取額が大きいところは、復興が遅れているという分析結果が出ているのです。なぜか。おそらく、保険金の受取額が大きいということは、それだけ大きな被害を受けているということであり、すると、いくら保険金を受取っても、復興が順調に進まないのではないかと考えられるのです。つまり、地震保険が復興に有効なのは、被害が小さな規模のときであるという可能性を指摘できます。まだデータの分析途中で、もっと精査していかなければいけませんが、ここまでの分析が正しいとすれば、復興における保険の役割は重要ではあるものの、大きな自然災害に対するリスクマネジメントとして、保険に頼り切るのは危険であるということがいえます。

 リスクマネジメントには大別して2つの方法があります。保険はロスファイナンスやリスクファイナンスと呼ばれ、地震についていえば、地震発生後に発生した損失を埋め合わせるために資金を入手する方法です。それに対して、発生する損失の頻度、損失額を軽減し、予想される損失額を減少させる方法は、ロスコントロール、リスクコントロールと呼ばれます。地震に関して言えば、発生する頻度をコントロールすることはできないので、予想される損失額を減少させる行動のことを意味します。例えば、工場や社屋に耐震補強を施すことでしょうか。ロスコントロールもロスファイナンス、どちらも未来の被害を予測して行うリスクマネジメントで、当然、費用がかかります。中小企業の場合、資金的に余裕のあるところは決して多くありません。そこで、筆者達の分析結果を踏まえながら、費用対効果の高いリスクマネジメントはどちらなのかと考えてみると、地震の被害が大きくなりそうだと予測する場合は、まずは、ロスコントロールが有効であるということになりそうです。

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