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2020.01.22

軽い!強い!錆びない!次世代構造材CFRPの用途を広げる

軽い!強い!錆びない!次世代構造材CFRPの用途を広げる
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>>英語版はこちら(English) カーボンファイバー(炭素繊維)はスポーツ用品などに使われ、軽くて丈夫なことが知られています。近年では、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)として、航空機や宇宙機器などにも使われています。しかし、実用化の歴史が浅く、まだ未知の部分もたくさんあります。そこで、世界中の企業や機関で研究が行われていますが、本学でもその研究が進められています。

優れた特性をもつ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)

岩堀 豊 炭素繊維強化プラスチックとは、非常に強度が高く硬い炭素繊維と、それを束にして積み重ねエポキシ樹脂等のプラスチックで焼き固めて作られた複合材料のひとつです。炭素繊維は、合成繊維を高温で蒸し焼きにして製造されています。

 炭素繊維を強化材にしたプラスチックということで、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と言うわけです。

 このCFRPの特徴は、まず、軽量であることです。鉄鋼材料の比重が約7.8、アルミニウム合金が約2.7に対して、CFRPは1.6程度です。構造物を非常に軽量に製作することが可能となるのです。また、炭素繊維は鉄の10倍以上も強いという特性がありますので、この高強度と軽量である特徴を生かして、飛行機をはじめ様々な工業製品に使用されているわけです。

 次に、CFRPは非常に設計自由度が高い材料と言うことができます。それは、炭素繊維の向き(配向)によって、様々な方向の強度や剛性を変えることができるからです。

 例えば、炭素繊維を同じ方向に並べ積み重ねれば、一方方向のみ非常に強いCFRPになります。また、炭素繊維を均等な方向で同じ量となるように積み重ねれば、全方向に同じ強度のCFRP板にすることが可能となるわけです。

 炭素繊維を織物にしておけば、複数方向に強化されたCFRP板ができますし、織物の持つしなやかさと安定性を利用し、硬化前に様々な形状に賦形しておくことも可能です。複雑な製品の形状も作ることができるのです。

 構造物の設計者は、これらの特性を用いて、要求される形状や寸法とともに強度や剛性を発現させるように積層方向や炭素繊維量(積層数)を設定していきます。その結果、金属材料では実現できない軽量で高強度、高剛性を有する構造体を設計できるわけです。

 もう一つ、CFRPの大きな特徴は、炭素繊維とプラスチックの複合材料であるため、錆びの発生や腐食することがないことです。この特性を利用することで、構造物の点検・整備の簡素化や間隔を長くすることができます。

 CFRPは、こうした特性を有するため、1980年代から民間航空機の翼や胴体にも使われるようになり、現在では航空機材料としてなくてはならない材料のひとつとなっています。

 また、CFRPは高強度・高剛性のみならず、温度差が激しい環境でも寸法安定性に優れているため、人工衛星の構造体や太陽電池パネルの構造部分等の宇宙機器にも使用されています。

 今後、その用途はインフラ施設や建造物、自動車、医療機器等、さらに広がっていくものと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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