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宇宙開発に貢献した「折紙」は人間の未来も救う!?

石田 祥子 石田 祥子 明治大学 理工学部 准教授

以前、ソーラーセイルなどの大きな宇宙構造物をロケットに積み込むため、小さく畳む技術に日本の折紙が活かされているというニュースが話題になりました。最近では、それは折紙工学として様々な分野でも応用されるようになり、注目されています。その最先端の研究チームが本学にあります。

宇宙開発から飲料缶にまで活かされる折紙の技術

石田 祥子 私は、折紙の数理を工学へと応用する折紙工学を専門としていますが、折紙工学とは、そのための教科書があるわけでも、折紙工学とはこういうものであるという体系があるわけでもありません。折紙とは、2次元形状から3次元形状を作るための構造設計として私はとらえており、そこに機能性を見出すことによって、様々な応用が可能になる学問だと思っています。私は、機械工学の視点から、ロボットや機械への応用を考えますが、数学や建築の専門家は、また別な視点からとらえ、幾何学や新しい建築物への応用を考える人もいます。ある意味、折紙はいろんな可能性を秘めているといえます。

 折紙の工学的な研究は、宇宙工学の分野では、1970年代頃から、ソーラーパネルのような大きな宇宙構造物をいかに小さく畳んでロケットに搭載し、宇宙で展開するかという観点から行われていました。また、身近なところでは、表面にダイヤモンドパターンが施された飲料缶をご存じの方も多いと思いますが、これは、薄い素材で作られた円筒が上下に力を受けて潰れるときに表面に現れるパターンを応用したものであると言われています。このパターンは折紙でも表現することができ、筒の素材が薄くても横方向からの力に対する強度が増す、つまり筒表面がへこみにくいという、軽くて硬い機能的な構造であることが知られています。

 紙を折ってなにかを表現するという文化は、世界の様々な国にあります。その中で、日本の折紙はそれを文化や芸術、趣味としてのみとらえるのではなく、形の変化を利用して人の役に立つものや技術を生む学問へと高度に発達しました。2000年頃には、「折紙工学」という言葉が生まれ、世界にも認められるようになったのです。

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