2024.03.21
- 2017年7月12日
- IT・科学
農業では人自身がビッグデータ。その活用システム構築を目指す
小沢 聖 明治大学 農学部 特任教授(退任)近年、欧米では、生産性の向上を目指して耕地への過剰な施肥や農薬散布を行う多投入型農業が、主に土壌汚染や環境破壊の面から見直され始めています。日本では、そうした環境問題に配慮しつつも、集約型の大規模農業を目指す動きがあります。しかし、そこには環境問題だけではなく、日本の農業の将来を考えたときに、大きな問題があるといいます。
作物と自然のやり取りがわからない栽培者が増える?
日本では、野菜などの収量アップや品質向上を目指して、大型ハウスでの栽培が盛んになってきています。社会のニーズを考えれば、ハウス栽培は今後も増加していくものと思います。ところが、最近の農業後継者の中には、ハウス栽培しか知らない人が増えています。ハウス栽培とは作物を自然からプロテクトして栽培していくことなので、そうした環境での作物しか知らないと、作物と本当の自然とのやり取りがわからない栽培者になってしまう恐れがあります。例えば、寒いとき、作物自体はどういう対応をするのか、それがわかっていなければ、ハウスで何かトラブルが起きたときに、栽培者として対処するための情報の幅が非常に狭くなってしまいます。農業とは、もともと自然の中で作物を栽培することから始まっています。戦後、農家の担い手になった世代も、ほとんどの人は露地からスタートしています。こうした世代は、長年の経験と勘を活かして作物を育ててきました。農業の知識の粋とは、まさにそうした経験と勘であり、それは温室やハウスにあるのではなく、露地栽培の中から蓄積されていくのです。そうした知識をもった世代をサポートし、その知識を後継者に伝えていくことは、農業の将来を考えたとき、大きなテーマになっていくと考えます。