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差別、格差、貧困の問題と、環境の問題は繋がっている

寺田 良一 寺田 良一 明治大学 文学部 教授

皆さんは「環境正義」という概念をご存じでしょうか。日本ではまだまだ広まっていない考え方ですが、アメリカやヨーロッパでは環境問題を解決していく上で基本となる考え方になっています。もちろん、それは、日本でもしっかり認識しなければいけない考え方なのです。

プラスチックゴミで考える環境正義

寺田 良一 「環境正義」とは、アメリカで生まれた「Environmental Justice」をそのまま訳した言葉なので、日本人がこの言葉からその概念を理解するのはちょっと難しいかもしれません。

 簡単に説明すると、人による環境汚染や破壊によって生じた負荷が、社会の中で不均等に配分されていること。

 そして、不公正な負荷を受けている人たちが、それに対してなかなか声を上げられないこと。

 また、社会の多くの人が、そうした状況に対して認識不足、理解不足であること。主に、このような3点で定義できます。

 具体例をひとつ挙げると、日本がプラスチックゴミを中国や東南アジアに「輸出」していたことがあります。

 ご存じの通り、プラスチックゴミは、海洋をはじめ自然破壊に繋がるものとして、いま、世界中で非常に問題視されています。ところが、日本では分別回収が進んでいて、街はきれいだし、環境汚染も破壊もないと思いがちです。

 しかし、その回収したプラスチックゴミがどうなっているか、知っている人は少ないのではないでしょうか。

 リサイクルされたりしているものもありますが、実は、資源という名目で中国や東南アジアの国々に輸出されていたのです。要は、それらの国にプラスチックゴミを押しつけていたわけです。

 しかし、2018年に中国がプラスチックごみの輸入禁止を打ち出します。途端に、日本国内でリサイクルしきれないプラスチックゴミが溢れる状況になっています。

 つまり、プラスチックを作ったことにより生じる負荷を、日本は輸出することで不均等に配分し、日本人の多くは、プラスチックによる環境問題など、自分たちにはないかのように思っていたわけです。

 しかも、その押しつけ先は経済的発展途上国でした。彼らは日本のやっていることに大きな声を上げられず、不公正な負荷を受けてきたわけです。経済力をつけた中国が日本にNOと言ったことは、この問題を象徴していると言えます。

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