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日本の「多文化共生」という概念を見直す時が来ている

昔農 英明 昔農 英明 明治大学 文学部 准教授

日本に働きに来てくれる外国人がいなくなる

 たしかに、日本でも、日本語教育の推進に関する法律が2019年に公布・施行され、外国人などへの日本語教育の実施は国や自治体、企業の責務とされました。しかし、移民がいないことになっている日本では、ドイツのような国家が主導する語学講習を中心とする統合政策が策定される具体的見通しは立っておらず、ドイツなどに比べるとあまりにも頼りない現状です。

 私自身が数年前に参観したある県の日本語教室では、教職を引退した人などが手弁当で隣県などから駆けつけて、ボランティアで教師を務めていました。しかも、地域の高齢者が楽しむカルチャー教室と同室で授業が行われていたのです。これでは、集中して学ぶこともできないでしょう。

 冒頭で述べたCMの批判の中に、アメリカ社会の人種差別を棚に上げて日本を貶めている、という意見がありましたが、それはあまりにも単純なものの見方です。

 アメリカは、少なくとも、建国以来、移民の国であることを標榜しており、自国の多様性を認める政策を実施しています。だから、白人による黒人差別はありますが、黒人系のオバマ氏が大統領に就いたり、黒人系の父とアジア系の母をもつ女性であるカマラ・ハリス氏が副大統領に就くことがあるのではないでしょうか。

 それに対して日本は、多くの移民がいる国であるにもかかわらず、いまだ「単一民族国家」という前提のもと、外国人を一時的に受け入れる政策を実施するにとどまっている現状があります。他国を批判するより前に、自国の現状を見直す必要があるのではないでしょうか。

 移民が増えると、自国の伝統文化が壊される、という議論もよく聞きます。しかし、ドイツ社会を見ればわかるように、モスク建設にあたっては、移民は地域社会の理解を得るように努力をしており、ドイツの人たちの視野や世界観が広がることはあっても、ドイツの文化が壊れるという決して単純な状況ではありません。

 むしろ、移民の人たちは統合講習のもと、ドイツ語やドイツの生活習慣を身につけようと懸命なのです。そうでないと、ドイツでの日常生活や就職などにおいて困難が生じてしまいます。まして、外国出身の親からドイツ国内で生まれた移民二世は、ドイツが自分たちの故郷であり、子どもの頃からドイツの学校で教育を受けており、ドイツ社会にとって文化的に異質な存在などではないのです。

 実は、同じことが日本でも起こっています。移民二世は日本社会で成長している人々だからです。

 外見が日本人と違うというだけで差別したり疎外することの方が、彼らを孤立化させ、日本社会の分断を招くことになるのではないでしょうか。

 2015年の「難民危機」では、ドイツは「ウエルカム・カルチャー」を掲げて、多くの難民を受け入れました。そこでは、多くのボランティアが難民の受け入れ支援に携わりましたが、メディアを通じた難民に対するイメージが、実際の交流を通じて変化したという事例もみられました。

 我々は、メディアを通じて移民に対する偏見やステレオタイプのイメージをもちがちですが、実際に会って交流すると、それが、まったくゼロになるということではありませんが、軽減されるケースもあるのです。

 日本が多文化共生を推進するのであれば、まず政府が、日本に移民が多く暮らしている社会であることを公言し、政府主導で移民の人たちを支援する施策を実施していくことが必要不可欠なのです。

 それがないために、日本では、ダイバーシティと言っても、多文化共生と言っても、理念や政策的中身の乏しい、表面的なものにとどまってしまっている現状があります。

 このような状況が続くと、人手不足がこれからも続く日本に、外国から働きに来てくれる人もいなくなってしまう懸念も現実となってしまうのではないでしょうか。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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