2024.03.21
- 2021年4月28日
- 国際
アメリカに、キノコ雲をマスコットにする高校があるのはなぜか?
石山 徳子 明治大学 政治経済学部 教授
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植民地支配というと、過去の出来事であり、歴史のプロセスのひとつと思われがちです。しかし、21世紀の現代社会にも植民地支配の構造は繋がっていて、それが様々な問題を生んでいます。それは決して他人事ではなく、日本で暮らす現代の私たちにも関わる問題なのです。
先住民族から収奪した土地を基盤にしてつくられた、アメリカ合衆国
植民地支配というと、第二次世界大戦後に多くの国が独立し、支配者たちは本国に帰って行った、というイメージをもっている人も多いと思います。
しかし、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドなどは、ヨーロッパなどからやって来た人たちが入植者としてそのまま留まり、その入植者たちによってつくられた国家です。このような歴史については、セトラー・コロニアリズムという概念を用いて、説明することができます。
例えば、アメリカ合衆国の場合、主にヨーロッパからやってきた入植者がアメリカ大陸に古くから住む先住民から土地を奪い、彼らを特定の居留地や、その他のいわゆる「辺境」地帯などに追いやってきたという歴史を抱えています。
そもそも、北アメリカ大陸に住む先住民はそれほど多くなかったのだろう、というイメージをもっている人も多いかもしれませんが、東海岸から西海岸まで、実に多くの民族が住んでいて、それぞれに異なる言語と歴史をもっていました。
多くの先住民たちが、突然やって来た入植者とその子孫によって、土地を追われることになったのです。
その後、白人が収奪した土地はニューヨークなどのような大都市へと変容していきました。一方、先住民の居留地とされたところは、農業や牧畜に不向きな砂漠地帯などが大半を占め、経済発展から取り残されていくことも多々ありました。
大都市で生まれ、暮らしていると、ごく身近に先住民の居留地があることは少なく、先住民の知り合いや友人がいる人もあまりいません。そうなると、いまを生きる先住民の存在を知らず、彼らは歴史上の、滅びた民族である、という誤った認識を持つ人も少なくないのです。
アメリカ先住民のステレオタイプは、日本に住む私たちにも浸透しているように感じます。例えば、アメリカ先住民というと、頭に羽根飾りをつけ、戦闘的な奇声を上げるというような、映画などで示されてきた「インディアン」をイメージする人が多いのではないでしょうか。ただ、これは偏見に基づく、誤った認識です。
そのいっぽうで、20世紀の半ばに入ると、滅びた民族と思われている先住民が暮らす辺境の地が、辺境であるがゆえに極秘の軍事計画を遂行するための施設を置くのに最適であったり、貴重な鉱物が産出されることがわかった地域もあり、軍事活用されるようなところが出てきました。