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日韓関係は韓国の歴史を知ることで見え方が変わってくる

明治大学 文学部 専任講師 鈴木 開

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2018年の韓国大法院の判決により、いわゆる元徴用工問題が起きて以来、日本と韓国の関係は戦後最悪と言われます。また北朝鮮とは対話のテーブルにつくことすらかないません。では、問題はどこにあるのか。先入観や固定観念にとらわれず、あらためて歴史を振り返ることが、隣国との関係を考えるきっかけになります。

実は多い、中国や朝鮮の歴史に対する誤解

鈴木 開 いま直面している問題の解決を図ったり、未来のデザインをしたりしようとするとき、歴史に学ぶ、ということをよく言います。

 確かに、それはとても重要なことです。しかし、私たちは往々にして、現在の尺度で歴史を見てしまいがちです。それでは、歴史の誤った解釈になってしまい、歴史から学ぶことも、そこから、より良い未来像を描くことも難しくなってしまいます。

 膨大な歴史事象、さらにそこにある大きな歴史の流れを意識しながら、現在の新たな側面に光を当てる、そういう営為が歴史に学ぶことだと思います。

 私はもともと、近世の日朝関係に関心をもっていましたが、朝鮮の側から考えようとすると、まず、朝鮮と中国の歴史を知ることが必要であることがわかってきます。

 よく、朝鮮は中国に対して事大主義であると言います。それは、朝鮮の姿勢を批判的に捉えた言い方ですが、しかし、中朝の歴史をきちんと見ていくと、それも一面だけを見た言葉であり、ことはそう単純ではないことがわかります。

 例えば、中国史について、清が明朝を滅ぼしたと思っている人が多いと思います。

 確かに、1644年に北京は陥落し、ときの崇禎帝は自決して明朝は滅亡します。しかし、これを成したのは清ではなく、明の国内で起きた農民が主力の反乱軍であり、それを率いていたのは、やはり陝西の貧農の出身である李自成です。

 ところが、この李自成と抗戦する明朝の軍の一部が、中国東北部に勃興した満洲族を中心とする清と連合し、李自成が退却した後の北京に入るのです。

 しかし、その清朝も、明朝の遺臣などの抵抗に長く遭い、中国全土を制覇するのに、そこから約50年かかります。

 つまり、清が明を滅ぼして単純に王朝が入れ替わった、というのは明らかに歴史を誤解しているのです。

 最初にジュシェン(女真)族を統一してハン(汗)に就いたのはヌルハチで、それは1616年のことです。

 それを継いだホンタイジは内モンゴルを征討するなど、勢力を広げ、1636年に国号を清とすると、朝鮮半島にも進出します。

 その頃の明は、すでに農民の武装蜂起が起きるなど、国力は低下傾向にありました。宗主国である明の支援が期待できない朝鮮王朝でしたが、清の侵攻に対して抗戦を決意します。

 しかし、清の勢力はいかんともし難く、情勢を見極めた国王の仁祖は降伏を決断するのです。

 この仁祖の姿勢は、韓国でも長く批判されてきました。

 しかし、ほとんどの臣下が徹底抗戦を叫ぶ中で、仁祖と一部の臣下がそれを押しとどめ、降伏という外交戦略をとったことで、1392年に建国した朝鮮王朝は滅亡することなく、500年以上にわたって王朝を維持することになるのです。

 内部崩壊から滅亡し、その後、多くの漢民族が登用されるとはいえ、異民族である清に支配されることになる中国の歴史を見たとき、このときの仁祖の決断には評価があっても良いのではないかと思います。

 つまり、この事象を、朝鮮の事大主義の一例のように捉えることはできないと思うのです。韓国では今後、仁祖を評価する考え方が出てくるかもしれません。

 このように歴史の事象を丹念に見ていくと、私たちは歴史を誤解していたり、現在の尺度によるイメージからつくられたような歴史観をもっていることに気がつくことがあるのです。

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