明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

多民族国家「日本」への視座

鳥居 高 鳥居 高 明治大学 商学部 教授

東南アジアの歴史からの学びの意味 ―2分法からの脱却―

 「東南アジア」は、地勢上や宗教分布の特徴から、タイ、ミャンマーのように仏教の影響が強い大陸部とイスラーム教の影響が強い島嶼部に大別される。私が中心に研究しているのは、後者に属し、比較的小国のマレーシア、シンガポール、ブルネイである。
 日本からは島嶼部東南アジアが見えにくい。その原因のひとつは、日本国内での「日本史」「世界史」という2分法の歴史の学び方にあると思う。もっとも象徴的なのは、フランシスコ・ザビエルとその背景にあるポルトガルのアジア進出に関する記述が2分されていることであろう。日本史の教科書では、キリスト教の伝来と共にザビエルと日本への上陸(1549年)が記述される。一方、世界史の教科書では、「大航海時代」の名称のともに、ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路の「発見」が記述される。しかし、ザビエルがインドから日本に到着するまでの足跡、またポルトガルがインド航路発見の後、マラッカ王国(注)やモルッカ諸島の国々をはじめとする東南アジア世界との出会いが抜け落ちてしまっている。この結果、ザビエルがインドから東アジアへ、まるで一足飛びで飛んだ印象さえ受けることになる。ポルトガルはキリスト教の教化・布教と香辛料を求めて「東南」アジアに進出したことが目的であったにもかかわらず・・・
 こうしたギャップは世界史といいながら、日本のみを「日本史」として独立として扱い、実際には「日本を含めない世界全体の歴史」を世界史と呼び、人類の歴史を学ぶというアプローチの仕方に大きな問題点をふくんでいる。果たして、こうした2分法の歴史へのアプローチが、グローバル化の時代の中で、意味を持つのであろうか。

国際の関連記事

「タイ的自由主義」がわかると、日本人もタイ人が好きになる

2022.2.25

「タイ的自由主義」がわかると、日本人もタイ人が好きになる

  • 明治大学 国際連携機構 特任准教授
  • タンシリトンチャイ ウィライラック
西欧でも関心が高まる、私たちが知らなかったイスラム教の魅力

2022.2.10

西欧でも関心が高まる、私たちが知らなかったイスラム教の魅力

  • 明治大学 文学部 専任講師
  • 井上 貴恵
旬のサンマを味わう幸せを将来世代に残すために

2021.12.8

旬のサンマを味わう幸せを将来世代に残すために

  • 明治大学 法学部 教授
  • 佐藤 智恵
国宝の金印が偽物、ではないことがわかった

2021.11.10

国宝の金印が偽物、ではないことがわかった

  • 明治大学 文学部 教授
  • 石川 日出志
日本のマンガは、日本の人々を多面的に写し出してきた鏡である

2021.10.20

日本のマンガは、日本の人々を多面的に写し出してきた鏡である

  • 明治大学 国際日本学部 准教授
  • 森川 嘉一郎

新着記事

2022.05.26

ロールモデルを設定し、自己成長の戦略を立てよう

2022.05.25

民事裁判のIT化は迅速化のためだけではない

2022.05.19

どんな時も、自分の価値観を大切にしよう

2022.05.18

原発問題とは、エネルギー問題だけを意味しない

2022.05.17

心を開いて、積極的にコミュニケーションを図ろう

人気記事ランキング

1

2022.05.25

民事裁判のIT化は迅速化のためだけではない

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2013.12.01

環境保全は企業に利益をもたらす ―求められるエコ・テクノストラクチャーとエコ・フ…

4

2021.12.15

使い捨て文化にはない豊かさがある、日本の漆器の文化

5

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

リレーコラム