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教員が多忙でも頑張れるのは、良いこと?

高野 和子 高野 和子 明治大学 文学部 教授

非正規教員の増加は日本の教育を揺るがす

高野 和子 非正規教員には、臨時的任用教員と非常勤講師などがあります。臨時的任用教員には、教員免許状を取得しているものの教員採用試験に不合格だった人が、試験に合格するまでの間、勤めていることが多いのです。それでも、正規教員と同一の職責を担うことができるので、学級担任をもつこともあります。しかし、来年以降も同じ学校に勤めているのかは、わかりません。非常勤講師は授業だけを受持つことになっている教員で、職員会議などの時間は別室待機になることもあります。そうなると、それぞれの子どもの様子や気になった点の申し送りなど、子どもの情報の共有には参加できません。正規教員にとっても非正規教員の担当している部分は把握できにくくなります。しかし、子どもたちにとっては正規も非正規も先生です。授業が終わってから質問にくる子や、校外で問題行動を起こしている子を見かけたとき、非常勤講師はどう対応したら良いのでしょう。このような非正規教員が、2013年の文科省調査では全教員の16.5%を占めるようになっています。

 実は、日本の教育は、非正規化のもたらすマイナスの影響を受けやすいという特徴を持っているのです。

 例えば、欧米では、授業をする教員以外に、子どもの心理面、進路や就職関係、学校とコミュニティとの関係、子どもの安全確保、等について支援者・専門家がいて、それぞれの専門機能を分担していますし、部活動のような活動は地域のスポーツクラブなどが担っています。学校の教員が部活動を受持って休日がなくなることはありませんし、学校の門を入るまでは家庭の責任という関係であれば、子どもが下校途中に問題を起こしたからといって担任の教員が駆けつけることも起こりません。このように教員の仕事が授業、教科指導に限定されている場合は、仕事を部分に分けて非正規教員と分担することに、それほどの無理はありません。

 それに対して日本の教員は、授業以外のさまざまな仕事をするものとして存在してきました。そのなかで、教育現場では、「子どもをまるごととらえる」と表現される子どもとの向き合い方が生み出されました。例えば、算数ができない子どもがいたときに、その子の身体の調子、気持ちの様子、その気持ちの様子を生み出す友達関係、身体の調子を引き起こす家庭の状況、育ちのプロセス、親子関係といったものを理解し、その上でなぜ算数ができないのかということを考えて対応しようとしてきたのです。これは、子ども理解と実践において非常に優れており、学力の向上だけでなく、人間的成長をうながしてきました。教員の仕事が授業以外も含めた複雑で総合的なものである中でこそ生み出されたものだと思っています。しかし、現状では、非正規化で全体の把握ができず、「まるごととらえる」前提が崩れたまま、加速度化する多忙の中で教員が複雑な多機能を果たすことを要求され続けています。日本の学校教育のあり方は非正規化に弱い、非正規化は日本の教育の根幹を揺るがしかねないのです。現在、国は、「チーム学校」ということで学校に教員以外の様々な職種を導入して教員の多忙を軽減することを提案しています。教員の多忙が放置できないレベルだと認識されたと言えますが、教員と多職種との間の分業を進める前提として、教員の非正規化のひろがりで教育に何が起こってきたのかを検証する必要があると思います。

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