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これからは内部通報を促す企業が力をつける

明治大学 法学部 教授 柿﨑 環

2020年6月8日、「公益通報者保護法」の改正法が成立しました。これにより、企業などの不正について告発がしやすくなり、コンプライアンス経営が進むことが期待されますが、改正に向けた審議会である「公益通報者保護専門調査会」の副座長を務めた本学の柿﨑教授は、改正の意図は、企業の不祥事防止だけにとどまらないと言います。

14年ぶりに実現した「公益通報者保護法」の改正

柿﨑 環 事業者の法令遵守を促進し、国民の安全・安心を確保する目的で「公益通報者保護法」が施行されたのは2006年でしたが、その後、改正がなかなか実現しませんでした。しかし、今回の改正によって、ようやく、本来の意味での「公益性」を確保する法への第一歩が踏み出せました。

 企業で働く従業員のみなさんにとっても重要な改正ポイントがありますから、その内容を知っておいていただきたいと思っています。

 改正のポイントは、大きく分けると4つあります。

 ひとつ目は、通報者の保護対象が広がったことです。従来は、その企業に勤める従業員だけでしたが、退職した人と役員も保護の対象となります。

 ただ、気をつけてほしいのは、退職者については退職後1年以内という条件があります。

 また、役員については、会社の不正などに対して、そもそも善管注意義務がありますから、不正に気がついたら一定の是正措置などを講じなければなりません。それでも力が及ばず外部通報などに至った場合、一定の条件のもとに保護の対象となるということです。

 公益通報とは、公益に反する企業の不正を通報することですから、保護対象となる通報者は、本来は誰でも良いはずです。

 例えば、その企業の従業員の家族や、取引先の人、一般の消費者なども不正に気がつくことがあるはずです。実際、ヨーロッパの公益通報を規律するEU指令などでは取引先の人も保護対象になっています。そこまで保護対象を広げることは、今後の課題として検討していく必要があります。

 二つ目のポイントは、従業員が300名を超える企業には内部通報体制の構築義務が課されたことです。すなわち、従業員が不正行為などに気がついた場合、速やかに内部通報できる社内体制を整えておかなければならないということです。

 これを怠った場合には、助言、指導、勧告などの行政処分が下されます。勧告にも従わない場合は社名が公表されます。

 それは、企業にとっては大きなレピュテーションリスク(企業の信用やブランド価値の低下)ですから、その意味でも、内部通報体制の構築が進むことが期待できます。

 ただし、そのためには、社内に通報窓口を設置して担当者を置いたり、弁護士を雇うなど、相当のコストがかかります。中小企業にとってはその負担は大きいと考えられるので、従業員数が300名以下の企業では努力義務となりました。

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