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新たな社会資本の整備が進展 20兆円近い経済波及効果

 「国家戦略特区」の取り組みは、オリンピックに向けた都市政策とも連動してくるものだ。「国家戦略特区」における規制緩和の内容は、「容積率・用途等土地利用規制の見直し」「道路の占用基準の緩和」「一ヶ月未満の滞在施設の旅館業法の適用除外(外国人滞在ニーズへの対応)」「公立学校運営の民間への開放(グローバル人材の育成)」「雇用条件の明確化(グローバル企業の投資促進)」「有期雇用の特例」「外国人医師による外国人向け医療の充実」など多彩だが、その多くがオリンピック絡みであり、オリンピック開催決定が「国家戦略特区」構想を前進させる推進力となった。オリンピック開催の決定によって「国家戦略特区」構想が、“期限までに実行しなければならない”という局面に移行し、“いずれ実現すれば嬉しい”という従来の政策とは一線を画すことになる。
 オリンピック開催に向けて、取り組まねばならないことがある。現在、東京の社会基盤は成熟しているものの老朽化が進んでおり、その更新・改良を早急に進めねばならない。2020年の「東京五輪」開催に伴い整備されるのは、主に江東区を中心とした臨海部である。江東区念願の、豊洲―住吉・地下鉄開通も射程に入ってきている。成田空港に加えて羽田空港の国際化も加速する。成田空港と羽田空港を合わせても、ロンドンの空港と比較して海外に飛ぶ本数は半分以下だ。本数を増やすためには空港の拡大が必要であり、2020年には間に合わないが、羽田ではすでに第5滑走路の可能性がでてきている。24時間営業も実行されることになるだろう。さらに成田空港、東京駅、羽田空港を結ぶ成羽線も着工される予定だ。リニア新幹線は2027年開業予定であり、オリンピックもにらんで、発着駅である品川駅周辺の環境整備が進展する。東京都はオリンピックによる経済波及効果を3兆円と見積もっているが、都市開発の“前倒し効果”を併せて考えれば、3兆円という数字にとどまらない。東京が進める「アジアヘッドクォーター特区」構想での海外企業立地による雇用増加、海外からの客を収容するためのホテル建設、それに伴う観光業への波及効果、さらにオリンピック開催で国民のマインドが変わり購買意欲が向上することも考え併せれば、筆者は合計で20兆円に近い経済波及効果があると試算している。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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