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2018.09.04

#3 民泊を規制する地方公共団体の条例は法律と対立する?

#3 民泊を規制する地方公共団体の条例は法律と対立する?
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地域ごとの実情に合わせた規制は必要

民泊を健全化させるための民泊新法が施行されましたが、さらに、独自の条例を設けて民泊に規制をかける地方公共団体も多くあります。これに対して、民泊の実施そのものを制限するような規制は不適切だという意見もありますが、私は、地域の実情に合わせて地方公共団体が規制をかけることは大事だと考えます。例えば、都内新宿区の駅周辺であれば、商店は多く、マンションの空き室も多いので、民泊を推進しやすい条件が整っているといえます。それに比べ、同じ都内でも杉並区などは戸建て住宅が多い住宅地で、小学校などの教育施設や、幼児が遊べる公園なども多くあります。新宿区と同じ条件で民泊を進めようとするのは難しいのです。その違いや、地域住民の生活スタイルや意識に目が行き届くのが地方公共団体です。そこで、民泊新法で定められた民泊の年間許可日数180日をさらに短縮する、民泊が運営できる地域を商業地区に限るなどの規制を設けるのは、地域の実情に合わせた正しい判断だと思います。

ただし、地域住民の意識の変化など、変わる状況に応じて規制は見直していくことも必要です。例えば、民泊によって、地域に経済波及効果が生まれます。部屋を貸し出した家主だけでなく、宿泊者によって地域の小売店や飲食店、クリーニング店など、個人経営の店舗や商店街などが潤うことが考えられるのです。そもそも、中小の企業や店舗が恩恵を受けるのが観光ビジネスです。ところが、民泊では、恩恵を受ける店舗と、宿泊者の騒音やマナー違反などによって不利益を受ける住民が出てきます。この利害関係が対立する人たちの衝突、コンフリクトを緩衝するのが地方公共団体の役割でもあります。いまは、地域住民の安心を守る方向に重点がおかれていますが、今後は、恩恵が平準化し、できるだけ広く行き渡るような仕組みを構築していくことが必要です。そのためには、実は、地方公共団体任せにするのではなく、地域住民が自ら積極的に声を出し、議論して、民泊に対する方向性を出していくことが重要です。すると、民泊には経済効果だけでなく、別の形の効果や恩恵があることが見えてくるはずです。私は、そうした議論に期待をしています。

次回は、民泊がもつ新たな可能性について解説します。

#1 なぜ民泊が必要なの?
#2 民泊の問題点は改善できるの?
#3 民泊を規制する地方公共団体の条例は法律と対立する?
#4 P2P型には、B2C型の民泊にはない魅力がある?
#5 日本に民泊は定着する?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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