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#5 都市か地方の二者択一じゃなくても良い?

明治大学 農学部 教授 小田切 徳美

都市も地方もフラットに捉える生き方が現れ始めている。

前回に続き、また、私のゼミ生の話で恐縮ですが、本学のプログラムでタイに留学するなど、非常に活動的な海外志向の女子学生がいました。彼女はなぜか、私のゼミに入り、4年生になるとき、1年間休学し、自分のネットワークで知った、新潟県の商店街にあるお米屋さんの再生に参加しました。同じネットワークで参加した別の大学出身の女性2人とともに「コメタク」というプロジェクトを興したのでした。そこでは、お米を通じて人とつながるというコンセプトの下、「米屋づくりワークショップ」や、「料理教室」、「お米についての講座」など、様々なプログラムを実践し、地域の人たちが関わりをもちあってつながり、豊かに暮らせるきっかけづくりの活動を目指しました。さらに、お店の改装費を捻出するためにクラウドファンティングを利用するなど、地域にとどまらない、幅広い発想をもっていました。この「コメタク」プロジェクトは成果を上げるとともに、様々な方面から注目されたのです。その後、彼女は復学し、都内の出版関係の企業に就職も考えたのですが、新潟への思いが強く、新潟県で移住や学生の現地インターンシップをコーディネートする団体に勤める決断をしました。そして、現在では、その団体の職員として、新潟を拠点に、インターンシップの学生と現地のマッチングのために各地を飛び回っています。既に大活躍です。もし、彼女がそのまま都内の企業に就職していたら、収入はその方がはるかに良かったでしょうが、現在のように活き活きと、大活躍できていたかはわかりません。これは、いわば、新しいキャリアデザインだと思います。収入よりもやり甲斐のある活動を選ぶ、都市よりも地方を選ぶ、それでも、豊かで充実した生活なのは後者なのです。これは、キャリアデザインのイノベーションではないかと思います。

彼女にとっては、農山村も都市も、海外もフラットなのです。いまは新潟県を拠点に活動していますが、その経験と知識は都市でも活かされるはずです。実際、彼女の活躍は、東京にある全国規模の団体や大学からも注目されています。また、途上国開発にも関心がある彼女にとっては、いまの経験は将来、海外でも活かすことができるでしょう。前回紹介した女性もそうですが、いま、この段階で自分の力を発揮できる場を把握し、そこで学んだものを、今度は異なる場で発揮していく。その場、その場に、彼女たちにとっては壁がないのです。これは、個人としては新しい現象ですが、地方の再生が都市の再生につながる循環、対流を考えたとき、個人のレベルでそれに対応する生き方が現れてきたと考えられます。いま、田園回帰を考えている皆さんも、その挑戦は自分の再発見につながるし、同時、日本社会の再生につながっていくことかもしれないのです。

次回は、農学部出身の人材が活躍する背景ついて紹介します。

#1 「地方創生」って、都市には関係ないでしょう?
#2 田園回帰って、どうやったら上手くいく?
#3 地方の生活に関わってみたい!! でも、どうやって?
#4 地方での活動を成功させる方法は?
#5 都市か地方の二者択一じゃなくても良い?
#6 農学部が人気なのはなぜ?
#7 でも、地方は消滅するって本当?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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