2024.03.14
- 2017年3月24日
- リレーコラム
#1 悪徳商法に泣き寝入りしない!消費者保護の法律を学ぼう!
川地 宏行 明治大学 法学部 教授民法の大原則「契約の拘束力」を盾に、クーリング・オフの穴をつく悪徳業者。
なぜ、悪徳商法というものが起こるのか。それは、悪徳業者が消費者と商品売買などの契約を結んだ場合、民法の原則である契約の拘束力が発生することを利用するからです。つまり、契約が成立すると契約の拘束力により、「注文したけど、やっぱり買うのはやめた」などと一方的に契約を破棄することはできなくなるのです。この契約の拘束力を悪徳業者は盾にします。その一方で民法は、契約の締結に際して詐欺や強迫があった場合は契約を取り消せると規定しています。しかし、その場合は、事業者に「意図的な」詐欺や強迫があったことを消費者側が証明しなくてはなりませんが、事業者の故意を証明することは大変難しいことですので、民法によって消費者が守られることは、実質的にはほとんどないのです。
そのため、悪徳商法に引っかかった消費者は泣き寝入りするばかりでした。そこで、1976年に、消費者を保護するための特別法としていわゆる訪問販売法(現在は特定商取引法に改称)が制定されました。
これは、事業者が消費者の家を突然訪問して契約を結んだ場合、消費者が事業者の帰責性についてなにも証明しなくても、無条件に契約をなかったことにできるという権利を定めた法律です。これが、クーリング・オフと呼ばれている権利です。クーリング・オフは民法の認める契約の拘束力を180度覆す権利で、クーリング・オフを認めた訪問販売法は消費者を保護する画期的な法律といえるものでした。
ところが、悪徳業者は法律の隙間をつきます。訪問販売にクーリング・オフが認められるようになると、割の合わない訪問販売に見切りを付け、消費者の家に訪問するのではないキャッチセールス(路上でアンケートを装うなどして事務所に連れ込み契約させる)やアポイントメントセールス(賞品に当選したなどおいしい話をでっちあげて事務所に誘い出して契約させる)。電話で勧誘する資格商法。通常のクーリング・オフ期間である8日間が過ぎてから騙されたことに気がつく内職商法やモニター商法。また、英会話学校やエステの契約を長期間結ばせて中途解約に応じなかったり、事業者との契約が解消されても信販会社への支払いが残ったりと、次々と新手の悪徳商法がつくり出されたのです。新たな悪徳商法が社会問題になる度に、新手の悪徳商法についてもクーリング・オフや中途解約ができるように法律が改正されてきました。しかし、このような後手後手に回るイタチごっこでは切りがありません。そこで、消費者契約全般についての総合的なルールをつくることを目的に、2001年に施行されたのが消費者契約法です。
次回は、消費者を保護する権利を認めた消費者契約法について解説します。
#1 悪徳商法に泣き寝入りしない!消費者保護の法律を学ぼう!
#2 どんな悪徳商法も投網に掛ける消費者契約法
#3 トラブルの多くは、クーリング・オフで解決できる
#4 特定商取引法の対象外には消費者契約法を適用
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。