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位相幾何学における図形の見かた

位相幾何学における図形の見かた

図1
図1
 私の専門は数学で、その中でも位相幾何学(トポロジー)と呼ばれる分野の研究をしています。位相幾何学は幾何学の一分野で、図形の性質を調べる研究分野と言ってよいでしょう。そして位相幾何学においては「連続変形」で同じ形になるような図形は全て同じ図形とみなします。つまり、伸ばしたり、縮めたり、曲げたりして同じ形になる図形はすべて同じ図形だと考えます。しかし切ったり、くっつけたりは連続変形ではないので、そのような変形は許されません。これはあたかもその図形が伸縮自在のゴムのような素材でできていると考え、このゴムの変形で同じになる図形は同じ図形と考えるわけです。たとえば、この位相幾何学では、なんと円と四角形は同じ図形です(図1)。こう考えると、図形が持っている長さや角度など、様々な性質が失われてしまうように思いますが、それでも失われない、変わらない性質というのは、その図形が持っている根源的な、そして本質的な性質と言うことができると思います。逆に言うと、そのような図形の本質的な性質を見抜くために、表面的な性質をそぎ落としていると言うこともできるでしょう。

 位相幾何学の中でも私は特に「曲面の写像類群」と「結び目群」と呼ばれるものの代数的な構造に興味をもっています。図形を調べるために、図形そのものをそのまま見て調べるのではなく、図形の特徴を代数的な対象である群というもので書き表します。そして得られた群の性質を調べることが元の図形の性質をつかむことにつながります。

図2
図2図3
図3
 ここではより直感的に理解しやすい結び目群について紹介しましょう。細かいことは気にしないことにすると、結び目とは次のようなものです。長さ1メートルほどの伸縮自在なゴムでできたひもをイメージして下さい。その両端をくっつけます。これが結び目です。何もせずにくっつけると単なる円ができますが、一回結んでから両端をくっつけると別の結び目ができます(図2)。結び目はグニャグニャと変形させて全く同じものになれば、同じ結び目と言うことにします。たとえば、図2の二つの結び目は同じ結び目でしょうか、それとも違う結び目でしょうか。つまり切らずに連続変形で右の結び目を左の結び目にできるかという問題です。直感的にはいくらグニャグニャと変形させてもできないように思いますが、それでは絶対にできないという証明にはなりません。しかしそれぞれの結び目群を計算すると、それを証明することができます。結び目群は、大雑把には結び目の外側にどのくらいの輪ができるかを表していて、結び目の不変量と呼ばれるものの一つです。同じ結び目であれば、結び目群は群として同型になります。よって結び目群が同型でないならば、結び目は同じではないと証明できます。実際、左の結び目の結び目群は無限巡回群と呼ばれる群になりますが、右の結び目の結び目群は無限巡回群にはなりません。このように結び目群を利用して、結び目が同じでないことを判定することができます。しかしこの結び目群も決して万能ではありません。根本的な問題としては結び目群が同型かを判定すること自体もかなり難しい問題であるということがあります。そのため、私は二つの結び目の結び目群の間に「全射準同型が存在する」という非常に都合の良い性質がどのような場合に成り立つかということに興味をもっています。全射準同型が存在するということは群が同型であるための必要条件であり、群が同型ではないとしても、群として非常に関係が深いと言えます。私の研究ではこの全射準同型の存在・非存在の決定や、その幾何的解釈に関する研究を行っています。特に最近は今までの例では全射準同型が満たしていたある条件を満たさない全射準同型の例を無限個構成できることを証明しました(図3)。

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