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ネット時代のコンテンツ流通

明治大学 国際日本学部教授 長谷川 文雄

研究最前線 magazine55

ネット時代のコンテンツ流通

図1
図1図2
図2図3
図3
 コンテンツという言葉が一般化してからそれほどまだ時間が経過していない。 以前は、新聞は「記事」、テレビは「番組」というようにメディアによりいわゆるコンテンツに相当する言葉が独自に使われていた。それがコンピュータの出現によりデジタル化され、インターネットの普及とともにネットで流通されてくると、次第にコンテンツとよばれ始めてきた。

 決定的な変化の一つは、そのコンテンツの視聴環境が大きく様変わりしたことである。パソコンに始まり、スマホ、タブレットとモバイル系にシフトし、インターネットに接続できれば、いつでもどこでも視聴できるようになってきた。利用者側には便利になってきたが、コンテンツの提供側に立ってみるといろいろな問題が起き始めている。これらを考察して、ネット流通を促進させようというのが研究の狙いである。

 インターネットが発達する以前はプレネットモデルとよび、図1のようにメディアごとに制作から流通、視聴に至るまでの一連の過程が垂直に閉じていた。それがネットの出現により、デジタルコンテンツはネット上を自由に流通できる水平的なモデルに変わってきた(図2参照)。しかしそこには四つの大きな課題が存在する。

 第一はいうまでもなく、 あらゆる著作物には「著作権」が存在する。著作権自体は細部にわたって規定されているが、いかなる場合でも利用するには、著作権者の許諾が必要になる。勝手に流通されれば既存メディアによる収益構造に影響を及ぼしかねない。第二は、それではどのように著作権を管理し、ビジネスモデルを構築するかで、利用者にも提供者にも利便性の高いものでなければならない。その結果現在主流になっているのが、プラットフォームの活用である。アップルやアマゾンはその代表を担っている。さまざまな特徴があるが、例えば販売ルートをもたないコンテンツ開発者が、プラットフォーム事業者に販売委託をすれば、短い時間で世界中に流通できる。日本でも中小のアニメメーカーやゲームメーカーも利用し始めている。第三は法体系の整備である(図3参照)。通信や放送に関する法体系が、これまでの垂直に閉じたモデルを基本に作られてきた。衛星放送やCATVのような新たな技術が出現するたびに、マイナーチェンジを繰り返してきたが、インターネットの普及とともに抜本的な見直しが必要になってきた。ようやく2011年に法改正が行われ、たとえば放送法の規定が大きく変わり、それまで放送とは「無線」による番組を直接受信することだったが、改正により「電気通信」による送信と規定された。つまり電波だけではなくインターネットを含む電気通信設備にまで拡張されたことになる。これで日本中どこにいても各局のテレビ放送が視聴できるのだろうか。これまでも電波送信と同時に、配信エリアのテレビ局が許可すればネットによる「再送信」が行われてきたが。第四は、この問いに関係した既得権との調整である。1950年代から県単位を基本に地方テレビ局が誕生してきた。いわゆる「県域免許制度」である。テレビ塔の電波は受信エリアが限定されるため、各地に地上局を建設し、全国をネットワーク化する必要がある。こうして東京キー局を中心にしていくつかの系列局が存在し、垂直に閉じたモデルが完成してきた。インターネット配信が本格化すれば、技術的には全国どこでも視聴できるようになるが、多額の費用を投じてきた地方局のこれまでの既得権益は大きく崩れ、存在意義も問われかねない。その調整が現在まだし尽くされていない。 ユーザー抜きの視点である。

 新聞、書籍、音楽などデジタル化されたコンテンツのネット配信についても同様なことがいえる。研究を通じて判明してきたことは、ネット時代のコンテンツ流通の促進は詰まるところ既得権益との調整に懸かっているといえそうである。

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