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スパコンからスマートフォンまで高速化を実現する並列処理技術

総合数理学部 ネットワークデザイン学科教授 吉田 明正

スパコンからスマートフォンまで高速化を実現する並列処理技術

 我々が日常的な生活を送るために、気づいていないところで、大規模な計算が行われています。例えば、インターネット検索、ビッグデータ(ユーザ履歴やセンサーデータ)の解析、人工知能、気象予測、創薬、航空機設計等があげられます。これらの高性能計算を支えているのは、スーパーコンピュータや、クラウド・データセンター(インターネット経由で利用するコンピュータ群)であり、モバイル端末やパソコンに代わって高速計算を行っています。

 コンピュータの計算速度の向上は目覚ましく、世界最速のスーパーコンピュータは、4年毎におよそ10倍の高速化が実現されています。それと同時に、我々が日頃使っているスマートフォンやパソコンも高性能化が進んでいます。これらのコンピュータの高速化は、複数のコア(計算装置)からなるマルチコア・プロセッサを使って、複数の計算を同時に行う並列処理により実現されています。

高性能計算を支える並列処理技術

図1: 4個のデータ計算の並列処理
図1: 4個のデータ計算の並列処理
 最新のスマートフォンやパソコンでは、8個のコアが内部に搭載されており、8つの計算を同時に行うことができます。一方、大規模な日本最速のスーパーコンピュータ「京けい」の場合、70万個という膨大な数のコアが搭載されており、同時に70万個の計算を行うことができます。つまり、コア数を増やせば増やすほど、理論的には、コンピュータの計算速度を上げることができるのです。

 並列処理の基本原理は、独立したデータを別々に計算することにあります。例えば、図1のように各データの計算時間を1秒とし、4個のデータの計算(T1〜T4)を行うプログラムを見てみましょう。

 従来のようにコアを1個使って計算する場合は、T1〜T4の順に計算しますので、4データ分の計算時間(4秒)がかかります。それに対して、コアを4個使って並列処理する場合は、各コアが1データ分ずつ計算を担当し、それらの計算が並列処理されるため、1データ分の計算時間(1秒)で全計算が終了します。この場合、並列処理により4倍の高速化が実現されたことになります。

マルチコアによる並列処理手法

図2:実用的なプログラムの並列処理
図2:実用的なプログラムの並列処理
 実用的なプログラムを並列処理するためには、図2のようにプログラムを階層的にタスク(小さなプログラム)に分割し、それらのタスク間のデータ依存(実行順序の関係)を解析し、並列性を表現したタスクグラフを生成します。

 例えば、図2のT1(タスク1)〜T4(タスク4)は、それらの間にデータ依存がないため、並列処理を行うことが可能です。一方、T62とT63は、T61へのデータ依存(図中の実線)があるため、T 61の終了後に実行可能になります。

並列処理ソフトウェアの自動生成

図3:並列化コンパイラを用いた並列処理の方法
図3:並列化コンパイラを用いた並列処理の方法
 マルチコアを使って並列処理を行うためには、並列ソフトウェアが必要になりますが、全てのコアを効率よく利用する並列ソフトウェアを作成することは、熟練のプログラマでさえ、困難な仕事であると言われています。

 そこで、吉田研究室では、並列ソフトウェア(アプリ)を自動的に作るための並列化コンパイラ(システムソフト)を研究しています(図3)。並列化コンパイラを用いると、通常のプログラムに、並列処理の適用部分を意味する指示文を埋め込むだけで、高度な並列ソフトウェアを自動的に作り出すことができます。

 この並列化コンパイラ技術を応用すると、あらゆるプログラムを容易に並列処理することが可能になり、スパコン(サーバ)からスマートフォンに至るまで、アプリを高速に実行することが可能になります。

 本学総合数理学部ネットワークデザイン学科では、IoT(モノのインターネット)によるネットワーク社会を支える社会基盤の実現を目指しており、本稿で紹介した並列処理技術は、さまざまなネットワークシステムへの応用が期待されています。

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