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研究最前線 magazine48

ソーシャル・ファイナンスとは

 現代社会の変化に伴い、既存の学問体系に加えて学際的な研究領域が新たに生み出されていますが、ここで紹介するソーシャル・ファイナンスもその一つでしょう。

 私の所属する経営学部は2014年度に「ソーシャル・ファイナンス論」という科目を学部3・4年生対象に新設し、筆者が担当しています。ただ、こういう概念はまだ日本では市民権を得ておらず、このような科目を開講している大学はまだほとんどないようです。本誌の読者の皆様も、初めて目にしたという方が多いのではないでしょうか。

 ソーシャル・ファイナンス(社会的金融)は、「経済的リターンとともに社会的リターンまたは社会的配当を求める組織によって提供される金融」(TSA Consultancy, 2003)と定義されています。「ソーシャル」(社会)と「ファイナンス」(金融)の二つの領域が合わさって、一つの新たな研究領域が生まれたといえます。

 金融理論は、いかに資本を効率的に増殖するか(つまり経済的リターンの最大化)を目的としていますが、ソーシャル・ファイナンスは金融の機能を通じて、自分のお金を増やすだけでなく、社会を良くしていくこと(これを社会的リターンと呼んでいます)も目的としています。いわば、〝二兎を追う〟のがソーシャル・ファイナンスの特徴です。

 ソーシャル・ファイナンスは新しい概念ですが、それに相当する活動は、実は中世にまでさかのぼります。日本では、鎌倉時代中期、庶民の相互扶助金融「無尽講」が発生したのが起源だといわれていますし、ヨーロッパでは14―15世紀のイギリス、イタリア、フランスなどで、高利貸しに対抗して、キリスト教会が設立した低利の金融機関Monte di Pietaが源流だと考えられています。

 では、現代のソーシャル・ファイナンスはどのような課題に取り組んでいるのでしょうか。

 たとえば、NPO(民間非営利組織)が事業融資を得たいと思っても、銀行は通常、NPOには融資しません。2015年10月以降、NPO法人は信用保証協会の保証対象に含まれるようになりましたが、他の法人格(例えば公益社団/財団法人など)は保証対象外であり、またNPOと営利企業の間には会計基準や収支構造の違いがあること、NPOは担保となる資産を持たない場合が多いことなどから、融資を受けにくいという問題があります。そこで、NPOの事情に精通した信用金庫やNPOバンクがNPOに融資をしています。

 これは日本だけの問題ではありません。アメリカやイギリスには、コミュニティ開発金融機関(CDFI)と呼ばれる、NPOに投融資する専門の金融機関(その多くは非営利組織)が数多く設立されており、NPOの発展を金融面から下支えしています。
ソーシャル・ファイナンスの対象はNPOだけではありません。日本では多重債務者の存在が社会問題となりました。債務整理した多重債務者は、借金からは解放されても、今度は再び消費者金融から借りられなくなります。そこで、彼らが生活を立て直すことを支援するために、消費者信用生協などが家計相談と低利の救済融資を行っています。

 途上国で広がっているマイクロファイナンスは、グラミン銀行とその創設者ムハマド・ユヌスのノーベル平和賞受賞によって有名になりましたが、途上国だけでなく欧米の先進資本主義諸国でも、1990年代以降注目され、少しずつ着実に実践が広がっています。

 日本のソーシャル・ファイナンスは、欧米に比べると規模が小さく、課題も多々ありますが(表を参照)、それだけに今後の発展に向けた研究の役割も大きいといえます。

表:欧米のソーシャル・ファイナンスとの比較

日本 アメリカ ヨーロッパ
社会的背景 NPOの台頭、震災復興、地域経済の疲弊 社会的弱者(マイノリティなど)の経済的自立の必要 サードセクターの台頭、金融消費者の倫理意識
主な担い手 NPOバンクなど コミュニティ開発金融機関(CDFI) ソーシャルバンク
政府の政策 特になし CDFIの認定・補助、地域再投資法による銀行規制、投資減税 マイクロファイナンスの支援、ソーシャルバンクの認可
規模 きわめて小規模。ボランティアが支える 大規模。有給職員が大多数 大規模。有給職員が大多数

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