明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

知的財産法政策研究所 – 知的財産をめぐる課題解決への指針を示す –

明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授 中山 信弘

知的財産をめぐる課題解決への指針を示す

※本内容は、明治大学広報誌『明治』VOL.58(2013年4月発行)に掲載されたものです。

 明治大学知的財産法政策研究所は、知的財産法の研究・教育拠点の形成を目的に、明治大学の「特定課題研究ユニット」として2009年10月に設置され、2011年度からは「研究クラスター」として活動しています。
 明治大学には知的財産法を専門とする専任教員4名、特任教員2名が所属し、情報法を専門とする専任教員2名が所属しています(2013年3月時点)。本研究所はこの環境を基盤として、内外の研究者、産業界・法曹界・政府・国際機関等と協力し、多面的な視点から知的財産法政策の研究を進めています。

知的財産法とは

知的財産法とは、財産的価値を有する情報の保護に関する法の総称を指します。知的財産法に含まれる法律としては、産業上有用な発明の保護に関する「特許法」、小説・音楽・プログラムを保護する「著作権法」、マークや業務上の信用を保護する「商標法」のほか、営業秘密等の不正な利用を規制する「不正競争防止法」等があります。
知的財産法の基本的な目的は、情報財(発明・著作物等)を創作した者に一定範囲の独占権を与えることで、新たな情報財の創作を促すとともに、更なる活用を促進することにあります。一般的には、知的財産権の保護が弱すぎると後発者に容易に模倣されるため、新たな情報材の創作が十分になされず、他方で保護が強すぎると利用に対する大きな弊害となります。知的財産法の主要な課題は、情報財の創作と利用のバランスを図ることにあります。

研究内容

fl13_img01_l 近年の情報化の進展により知的財産の重要性が増す一方で、様々な基本的な価値・政策と知的財産法の法目的との関係性が大きな問題となっています。例えば、表現の自由と著作権、公衆衛生・環境政策と特許権(途上国のための医薬品に係る特許の強制実施など)、伝統的知識・遺伝資源の保護と知的財産法制との関係などです。
さらに近年、情報財の創作環境・流通形態が大きく変化しています。コミックマーケットやクリエイティブ・コモンズの活動、いわゆるGoogle訴訟、企業側による環境技術パッケージの提供等はその変化の具体例です。情報財の創作や利用の実態とこれに関わる主体を、法体系の中でどのように位置づけるかが非常に重要な課題となっています。
明治大学知的財産法政策研究所は、情報財の多元的な価値とその創作・利用に関わる主体を、知的財産法の中でどのように扱うか、あるいは他の法制や法律外の問題として取引等に委ねるべきか、その理論的基準を明らかにし、もって知的財産法体系の再構築と法体系全体における知的財産権の再定位を試みるべく、様々な研究活動を進めています。

各プロジェクトの概要

(1)情報財の多元的価値と、創作・利用主体の役割を考慮した知的財産法体系の再構築
fl13_img02
「明治法律学校」からスタートした明治大学
 文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成23〜27年度)による研究プロジェクト(研究代表者:中山信弘)であり、前述の研究を実施し、明治大学を知的財産法研究・政策形成を巡る「人的ネットワークの基軸」「議論の場」として発展させることを目的とするものです。その活動の一環として、平成23年特許法改正、パブリシティ権(著名人の肖像等の有する顧客吸引力の利用に関する権利)に関するピンク・レディー事件最高裁判決、平成24年著作権法改正に関して、それぞれシンポジウムを開催しました。

(2)特許と公共政策研究会
特許法は一般に「産業の発達」を目的としているところ、近年、環境保護、生命倫理、開発、人権、社会的正義といった様々な公共政策上の多元的価値(公共善)が特許法の目的と抵触する事案が数多く生じています。本研究は、このような多元的価値を特許法の中にどう取り込むか、又はその外にどう位置づけるか等の問題を中心に、今後の特許制度のあり方について考察するものです。科学研究費補助金(基盤研究B、平成21〜23年度)による研究プロジェクト「特許制度の法目的と公共政策上の多元的価値」(研究代表者:高倉成男法科大学院教授)であり、その成果として2012年3月に国際カンファレンス「特許と公共政策」、11月にシンポジウム「知的財産と国際政策」を開催しました。

(3)コンテンツと著作権法研究会
著作物を中心としたコンテンツの創作・流通・利用に関する現代の環境は、著作権法がこれまで前提としてきた状況から大きく変化しつつあります。本研究は、電子出版や同人活動等の領域を中心に、創作・流通・利用に関わる各主体のもつ多様な利害に着目し、現代的な環境下で、各主体の利益の実現や調整に果たすべき著作権法の役割を明確にすることを目的として、著作権法の研究者のみならず、計量経済学、漫画文化論の研究者と共同での研究を進めています。2012年11月には出版者の権利を巡るシンポジウムを開催しました。

明治大学知的財産法政策研究所のメンバー(2013年3月時点)

  氏名 所属・職位 役割分担
研 究
代表者
中山信弘 明治大学研究・知財戦略機構 特任教授 著作権を巡る創作・利用主体の役割の変化、知的財産法体系の再構築
研 究
分担者
大野幸夫 明治大学法学部 教授 情報通信技術と知的財産権、派遣労働による創作を巡る問題
研 究
分担者
夏井高人 明治大学法学部 教授 情報財の定義
研 究
分担者
鈴木利廣 明治大学法科大学院法務研究科 教授 医事法と知的財産法
研 究
分担者
熊谷健一 明治大学法科大学院法務研究科 教授 特許発明、科学技術を巡る創作利用主体の役割と特許法の機能の検討
研 究
分担者
高倉成男 明治大学法科大学院法務研究科 教授 公共政策と知的財産権、知的財産法制の国際的側面の検討
研 究
分担者
石井美緒 明治大学法学部 特任准教授 知的財産をめぐる契約の拘束力―知的財産法・民法・独占禁止法等との関係
研 究
分担者
今村哲也 明治大学情報コミュニケーション学部 准教授 著作権・商標を巡る多元的価値(表現の自由、原産地表示等)
研 究
分担者
金子敏哉 明治大学法学部 専任講師 知的財産法体系の形成過程とその周辺領域の分析、創作利用の法的スキームの検討、全体の事務連絡担当
研 究
分担者
棚橋祐治 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻教授 産業政策と知的財産権
研 究
分担者
田村善之 北海道大学大学院法学研究科教授 法・政策形成主体の役割と知的財産制度
研 究
分担者
野口祐子 弁護士・国立情報学研究所客員准教授 クリエイティブ・コモンズと著作権制度
研 究
分担者
大久保直樹 学習院大学法学部教授 競争法と知的財産権
研 究
分担者
田上麻衣子 東海大学法学部准教授 生物多様性、環境政策と知的財産権
研 究
分担者
小島立 九州大学法学部准教授 文化政策と知的財産法
研 究
分担者
久慈直登 日本知的財産協会専務理事 日本企業の国際知的財産政策分析
研 究
分担者
安藤和宏 株式会社セプティマ・レイ代表取締役 クリエイティブ・コモンズと著作権制度

明治大学知的財産法政策研究所ホームページ http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/index.html
※各シンポジウムの議事録などもホームページに掲載

知の集積の関連記事

クリエイティブインタラクション研究所

2016.6.29

クリエイティブインタラクション研究所

  • 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科教授、クリエイティブインタラクション研究所長
  • 荒川 薫
世界が注目する折紙工学~明治大学の折紙工学研究拠点~

2016.5.18

世界が注目する折紙工学~明治大学の折紙工学研究拠点~

  • 明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授/先端数理科学インスティテュート所長 博士(工学)
  • 萩原 一郎
野生の科学研究所 – 科学を生命や人間に寄り添えるものに再生する –

2013.10.1

野生の科学研究所 – 科学を生命や人間に寄り添えるものに再生する –

  • 明治大学 野生の科学研究所所長
  • 中沢 新一

Meiji.netとは

新着記事

2017.11.15

TOEFL スピーキングスコアがアジア最下位の日本は、変われるか?

2017.11.08

暴走するのは核を保有した北朝鮮か? トランプか?

2017.11.01

「アメリカらしさ」に逆行する白人至上主義

2017.10.25

腸内フローラを活用すれば、人はもっと強く美しくなる

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

人気記事ランキング

1

2017.11.15

TOEFL スピーキングスコアがアジア最下位の日本は、変われるか?

2

2014.12.01

【特別号】箱根駅伝優勝を夢見て ―競走部に懸けた20年間の奮闘の軌…

3

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

4

2013.09.01

少子化問題を斬る ―原因は、未婚化・晩婚化・晩産化にあり―

5

2015.02.01

公共政策から社会問題を考える ―物事を相対化し、多角的に考えるこ…

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム