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原発訴訟の“ウラ側”から見えてくるもの

瀬木 比呂志 瀬木 比呂志 明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授

裁判所を変えるために私たちにできること

瀬木 比呂志 日本をより良い社会にしていく。そのために、まず改革すべきセクションといえば司法が最も効果的です。組織が巨大で権力の中枢とつながっている行政を変えていくのは、大変なことです。それに比べて、司法は組織が小さい割りに改革の効果はひじょうに大きいのです。たとえば、裁判によって原発でも止めることができるのですから。司法が本来の機能を果たせば、他にも極めて重要な変化が社会に起こることは確かです。逆にいえば、司法全体が、近年急速に強まっている権威主義、事大主義傾向の状態のまま悪くなっていけば、その影響はやはり非常に大きいものがあります。市民の権利と自由を守るべき最も重要なセクターが失われてしまうことになるからです。そして、最高裁判所事務総局は権力側の意向を踏まえて全国の裁判官をコントロールしようとしているのです。

 しかし、裁判官の判断に的確な監視と批判を行うことができるのは、本来、市民です。私たち市民は、裁判所の出す判断に無関心にならず、つねに関心をもち、その場限りの批判ではなく、持続的にきちんと批判していく姿勢をもつべきです。そのためには、例えば、最近増えている裁判ウォッチングにしても、面白そうな法廷を傍聴するだけでなく、法科大学院や法学部出身者、弁護士等の法律専門家にアドヴァイザーになってもらってグループを作り、系統的に傍聴を行って、その結果をインターネット上に公開すれば、裁判監視として大きな意味をもつようになるでしょう。そうしたグループがいくつも集まって共通のサイトを立ち上げれば、裁判所はそれを無視することはできなくなります。

 司法が健全に機能している社会は民度が高いものです。日本の司法を、社会を変えることができる司法本来の健全な姿に変えるために、私たち市民が行動することが、社会の民度を高めていくことにもつながっていくと、私は考えています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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