2024.03.21
もう、アベノミクスの夢から醒めよう
田中 秀明 明治大学 専門職大学院ガバナンス研究科 教授国民は、有権者としてしっかりとした評価をすべき
安倍政権は高い経済成長を訴えていますが、裏返していえば、それは、経済の高い成長があれば、構造改革や財政再建はいらないといっているようなものです。楽観論で国民は政府を信頼するでしょうか。先述のように、企業の業績が伸びているのに国民の生活が豊かにならない理由を考えただけでも、楽観論の問題がわかるはずです。債務残高はどんどん増えていますが、それは将来にツケを回すことを意味します。将来のことは、いまの私たちに関係ないと単純にはいえません。人は将来の予測に基づいて行動するものなので、借金が高い国の場合、現政権が将来の増税を意識させるような政策をとっていると、消費や投資を控えていくことが知られています。これを、非ケインズ効果といいます。つまり、安倍政権は経済の好循環を目指しているといいながら、実は悪循環を招いているかもしれません。
痛みをともなう政策でも、それが将来に必要なものであれば、政治家は国民にちゃんと説明し、国民に納得してもらうように努力すべきです。他方、我々国民は自分たちが払った税金が無駄なく使われているか、関心をもって政府を監視することが必要です。そのためには、国民一人ひとりが政治や経済の問題を、他人ごとではなく自分自身の問題として考え、有権者として選挙において政権を評価することが大切です。この夏の参議院選挙がまさにその機会です。もう、聞こえの良いスローガンに期待し、一時の景気に一喜一憂しているときではありません。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。