明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

国民は、有権者としてしっかりとした評価をすべき

 安倍政権は高い経済成長を訴えていますが、裏返していえば、それは、経済の高い成長があれば、構造改革や財政再建はいらないといっているようなものです。楽観論で国民は政府を信頼するでしょうか。先述のように、企業の業績が伸びているのに国民の生活が豊かにならない理由を考えただけでも、楽観論の問題がわかるはずです。債務残高はどんどん増えていますが、それは将来にツケを回すことを意味します。将来のことは、いまの私たちに関係ないと単純にはいえません。人は将来の予測に基づいて行動するものなので、借金が高い国の場合、現政権が将来の増税を意識させるような政策をとっていると、消費や投資を控えていくことが知られています。これを、非ケインズ効果といいます。つまり、安倍政権は経済の好循環を目指しているといいながら、実は悪循環を招いているかもしれません。

 痛みをともなう政策でも、それが将来に必要なものであれば、政治家は国民にちゃんと説明し、国民に納得してもらうように努力すべきです。他方、我々国民は自分たちが払った税金が無駄なく使われているか、関心をもって政府を監視することが必要です。そのためには、国民一人ひとりが政治や経済の問題を、他人ごとではなく自分自身の問題として考え、有権者として選挙において政権を評価することが大切です。この夏の参議院選挙がまさにその機会です。もう、聞こえの良いスローガンに期待し、一時の景気に一喜一憂しているときではありません。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

社会・ライフの関連記事

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

2024.3.14

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

  • 明治大学 商学部 特任准教授
  • 松尾 隆策
行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

2024.3.7

行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

  • 明治大学 法学部 教授
  • 横田 明美
LGBTQ問題の法整備の遅れと最高裁の視点

2024.2.29

LGBTQ問題の法整備の遅れと最高裁の視点

  • 明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授
  • 清野 幾久子
地球のエネルギー問題・環境問題を解決へと導く人工光合成

2024.2.22

地球のエネルギー問題・環境問題を解決へと導く人工光合成

  • 明治大学 理工学部 准教授
  • 岩瀬 顕秀
COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

2024.2.15

COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 加藤 竜太

新着記事

2024.03.21

ポストコロナ時代における地方金融機関の「新ビジネス」とは

2024.03.20

就職氷河期で変わった「当たり前の未来」

2024.03.14

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

2024.03.13

興味関心を深めて体系化させれば「道の駅」も学問になる

2024.03.07

行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2023.12.20

漆の研究でコーヒーを科学する。異色の共同研究から考える、これか…

3

2023.09.12

【徹底討論】大人をしあわせにする、“学び続ける力”と“学び続けられ…

4

2023.12.25

【QuizKnock須貝さんと学ぶ】「愛ある金融」で社会が変わる、もっと…

5

2023.09.27

百聞は“一食”にしかず!藤森慎吾さんが衝撃体験した味覚メディアの…

連載記事