明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

実用化が近づく自動運転車に、いま必要なこと

中山 幸二 中山 幸二 明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授

自動運転車の事故責任とは

 自動運転をめぐる法的課題としては、さらに事故時の法的責任の問題があります。民事責任に関しては、日本では自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)があり、車の運転中に人身事故を起こした場合は、被害者救済が最優先に行われます。この被害者救済制度は、自動運転車の人身事故の際にも有効ですが、他人に与えた人損に限られますから、仮に自動運転のシステムの不具合によって自損事故が起きた場合、運転者の保障はありません。現在は、多くのドライバーが任意保険に加入し、自身の死傷や物損に備えていますが、自動運転車のシステムトラブルなどの可能性を考えると、それに適った自賠責保険システムをつくることが望ましいといえます。

 刑事責任に関しては、2013年に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転処罰法)が制定されましたが、これが適用されるのは運転者に過失があった場合です。自動運転モードの車が事故を起こした場合、その責任は、車の製造メーカーやシステムのプログラム設計者などが負うことになるのではないかと思われがちですが、それは、余程の危険が予見されるにもかかわらず車やシステムを製品として出していた場合に限られます。また、Product LiabilityいわゆるPL責任を危惧する自動車業界の声がありますが、製造物責任法(PL法)を適用するには、車やシステムに「欠陥」があったことを証明する必要があります。

社会・ライフの関連記事

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

2024.3.14

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

  • 明治大学 商学部 特任准教授
  • 松尾 隆策
行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

2024.3.7

行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

  • 明治大学 法学部 教授
  • 横田 明美
LGBTQ問題の法整備の遅れと最高裁の視点

2024.2.29

LGBTQ問題の法整備の遅れと最高裁の視点

  • 明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授
  • 清野 幾久子
地球のエネルギー問題・環境問題を解決へと導く人工光合成

2024.2.22

地球のエネルギー問題・環境問題を解決へと導く人工光合成

  • 明治大学 理工学部 准教授
  • 岩瀬 顕秀
COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

2024.2.15

COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 加藤 竜太

新着記事

2024.03.21

ポストコロナ時代における地方金融機関の「新ビジネス」とは

2024.03.20

就職氷河期で変わった「当たり前の未来」

2024.03.14

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

2024.03.13

興味関心を深めて体系化させれば「道の駅」も学問になる

2024.03.07

行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2023.09.12

【徹底討論】大人をしあわせにする、“学び続ける力”と“学び続けられ…

3

2023.12.20

漆の研究でコーヒーを科学する。異色の共同研究から考える、これか…

4

2023.12.25

【QuizKnock須貝さんと学ぶ】「愛ある金融」で社会が変わる、もっと…

5

2023.09.27

百聞は“一食”にしかず!藤森慎吾さんが衝撃体験した味覚メディアの…

連載記事