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2015.10.05

原発本格再稼働の前に正しい議論を

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原発を正しく考えることは成熟社会への試金石

勝田 忠広 原子力規制委員会がどんなに綿密に調査を行っても、原発の安全性を保障できるものではありません。必要なのは、彼らの調査結果だけでなく、いまの科学力、技術力、それでも起こるリスク、そのときの対策、次世代のこと、それでも稼働させるメリット…、こうした様々な視点から、「現在の科学では議論できないこと」を抽出することです。そのとき最も重要で核となる信念が、決して「人の命」から目をそむけないこと、です。その議論ののち、政治的判断が最後に必要になります。ドイツは原発の廃止を決定しました。総発電量の7割以上を原発に頼っていたフランスは、5割に低下させることを決定しました。それぞれの決定には、様々な議論の上にくだされた為政者の重い政治的判断があります。
 私たち生活者も、生活者の立場でエネルギー問題を考える必要があります。自然エネルギーは安全ですが不安定で、いまの生活水準を維持できないかもしれません。しかし、いまの生活水準が本当に必要な水準なのでしょうか。むしろ、電気を売って儲かる人々が打ち出した供給量に合わせたニーズではなかったでしょうか。あらためて生活を見直し、本当に必要で無駄のない電気量をみつけるべきです。そのとき、どうしても自然エネルギーでは足りない分を、補ってもらうだけの他のエネルギー源があれば良いのかもしれません。
 「人の命」を最優先にした多角的な議論を行い、その上で重要な判断を下していく成熟した社会を構築することが、福島第一原子力発電所の事故を風化させない、私たち自身の成長につながるのではないでしょうか。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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