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「地域創生」の基点は民俗文化にある ―伝統芸能や祭り行事と地域力の関係からの提言―

明治大学 経営学部 教授 居駒 永幸

祭祀の歌に人々のアイデンティティがある

 私が研究してきたのは記紀・万葉の古代文学ですが、その舞台となった「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」がいま日本で世界文化遺産登録を目指しています。飛鳥・藤原の宮都が世界遺産登録によって注目されることで、『古事記』『日本書紀』『万葉集』といった日本文化の原点が見直されることになるでしょう。歌、つまり歌謡や和歌、近代になると短歌ですけれども、それらの文芸は日本人のアイデンティティと言えるのではないでしょうか。
では、歌とは何か? この問いが私には常にありました。なぜ歌がうたわれ、それが村落の中でどう機能し、なぜ伝えられ必要とされてきたのかを問い続けてきました。そして、その研究のために、私は沖縄県の宮古島へと向かいました。宮古島にはいろいろな古い祭祀が残っていて、中でも狩俣という270戸くらいの小さな集落には、営々とうたい継がれてきた多くの「神歌」があります。神に捧げる歌です。去年出版した『歌の原初へ 宮古島狩俣の神歌と神話』は、まだ十分に解明されていないこの神歌の意味を26年間通い続けて調査、研究したものです。「歌の原初へ」とは文字通り歌がどうやって生まれたのか、ということです。
突き詰めていく中で、私は一つの結論に至りました。歌は生活の根拠だったのです。そこに住んでいる根拠です。沖縄は干ばつと台風で厳しい自然環境にありますが、なぜここに根付き暮らしているのか。それは、「自分たちは神によって家や畑を与えられて、ここで生活を営んでいるのだ」と伝えることです。神とはどのような神で、どのようにして村を創り、どうして先祖は神から家や畑を与えられたのかを、歌で代々伝承してきたことが分かりました。
本土の祭りは華やかで見物人も集まりますが、宮古島のような生活の根拠としての祭祀は他人に見せるものではありません。住んでいる人たちだけが確認すればいい。そうして祭祀や歌を守り伝えてきたのです。東京から行った私など、はじめのうちは相手にしてもらえませんでした。祭祀を行う聖地の御嶽(うたき)に近づくなどとんでもないことでした。でも毎年通ううちにようやく認めてもらいました。今では、人々から逆に質問されます。「これはどういう意味か、どのような価値があるのか?」と。ずっと昔から伝わってきた、あってあたり前の存在に対して、あらためていま、集落の人たちはそれらの意味や価値を考えようとしています。

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