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和食のススメ ―加工食品が持つ有害性の恐怖―

明治大学 農学部 教授 長田 恭一

酸化した脂は体に悪い

長田恭一教授 日本人の食生活は昔と比べて大きく変化している。昔は主食の米を中心に水産物、野菜、畜産物などの多様な副食品が加わった健康的な和食だったが、やがて、食の欧米化が進み畜産物や油脂の消費量が増え、現在に至っている。そしてもう一つ、食の変化で見逃せないのが、生活環境や家族構成の変化、あるいは便利さや効率性を求める時代を背景に、ファーストフードをはじめとした外食やコンビニやスーパーの弁当、惣菜、あるいはカップ麺や冷凍食品など、加工食品の摂取が増えてきたことである。外食で提供される食材の多くも加工食品である。私は、長年にわたって食品栄養学の中の、「脂質代謝」を専門としてきた。食品に含まれる脂と健康の関係を研究・考察するもので、その観点から加工食品に潜む”食の危険性”を指摘してみたい。
まず、「酸化脂質」、酸化した脂肪の問題である。食品から摂る脂肪の大部分はトリグルセリド、いわゆる中性脂肪であり、エネルギー源として使われ、余分なものは肝臓や脂肪組織に蓄えられ、皮下脂肪や内臓脂肪となる。この中性脂肪を含む食品を長期にわたって保存しておくと、空気中の酸素や湿気等の作用によって、不快な臭いを発するようになる。これが酸化だ。過剰に摂取すれば、胸やけや胃もたれ、下痢などを引き起こすが、重篤な疾患に至ることは少ない。問題とされるのは、「コレステロールの酸化物」である。

「コレステロール酸化物」の怖さ

 脂質の一つであるコレステロールは、人体の細胞を構成する細胞膜を形成する主要な材料であり、生体機能を整えるホルモンの材料になるなど、人体に不可欠なものだ。このコレステロールが酸化すると中性脂肪の酸化物とは異なり、毒性を発現するようになる。問題なのは、無視できない濃度のコレステロール酸化物が加工食品中に存在していることだ。そのため、生体内のコレステロール酸化物の供給源の大部分は食事由来である可能性が高い。コレステロール酸化物は、細胞を死滅させることやがんの発症、あるいは種々の代謝機能の攪乱を誘発すること、免疫機能を低下させることなどの有害作用が明らかになってきている。さらにコレステロール酸化物がやっかいなのは、中性脂肪の酸化物とは違って、ノーマルなコレステロールと同じように様々な組織に運搬され蓄積されていくことだ。コレステロール酸化物の過剰な摂取が、即座に重篤な疾患を引き起こすことはないが、静かにゆっくりと体をむしばんでいく可能性は否定できない。コレステロール酸化物を摂取し続ければ、ある年齢に達した段階で動脈硬化などの心疾患やがんが発症するリスクは決して低くない。コレステロール酸化物の多くが加工食品由来であるという前提に立てば、そのリスクを回避するためには、できうる限り加工食品を摂取しないことが望ましいのである。

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