インボイス方式と帳簿方式の相違点
1950年代、フランスは付加価値税の仕組みを考案し世界に先駆けて導入、その後、1960年代後半から70年代前半にかけて、西欧諸国で相次いで取り入れられた。導入の背景は、EEC(欧州経済共同体・現EU)の域内経済統合、共同市場の創設に向けて間接税の国境調整を巡る紛争解決が不可欠であったからである。欧州が単一市場として機能するため、そして国内および域内での公正な競争を実現するため、付加価値税は最適な仕組みとみなされたのである。
付加価値税の基本的な仕組みの一つは、税の累積(カスケード)を防ぐために売上にかかる税額から仕入に係る税額を控除することである。この税額控除を制度面で担保する方式には、EU加盟国およびOECD(経済開発協力機構)加盟国(日本、アメリカを除く)で採用されている「前段階税額控除方式(インボイス方式)」と、OECD諸国の中では日本のみが採用している「仕入税額控除方式(帳簿方式)」がある。
「インボイス方式」とは、事業者が納税すべき税額を、個々の取引に係るインボイス(税額が明記された取引伝表)に基づいて算出するものである。具体的には、売上に係るインボイスに記載された税額の合計額から仕入に係るインボイスに記載された税額の合計額を差し引いたものが納付税額となる。インボイス方式は透明性が高まり不正を引き起こしにくいとされる。
日本が採用している「帳簿方式」は、事業者が納付すべき税額を帳簿に基づいて算出するものである。帳簿に記載されている売上高に税率を乗じた金額から、同じく帳簿に記載されている仕入高に税率を乗じた金額を差し引いたものが納付税額となる。この帳簿方式は、消費者が負担した消費税相当額の一部が事業者の手元に残る、いわゆる“益税”を発生させる一つの要因となっているという問題がある。つまり、少なくない税の徴収漏れが発生しているということであり、透明性を損なう仕組みと言わざるを得ない。事業者が納税したかどうかを確認できることが必要であり、そのためにはインボイス方式の導入は不可欠のことと思われる。
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