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災害大国日本では、保険が中小企業を救う!?

浅井 義裕 浅井 義裕 明治大学 商学部 教授

リスクマネジメントを支援する政策も必要

 中小企業は1社1社の規模は大きくありませんが、企業数は日本全体の99%以上を占め、従業員数も約7割に達しています。特に、地域経済において、中小企業が果たしている役割は非常に大きいものがあります。今回、私が分析の対象にしている製造業では、部品などの中間財を作り、他の企業と取引しているところがほとんどです。すると、1社が潰れると、周りの企業に影響し、結果、地域経済にも影響を及ぼします。リスクマネジメントができない企業は淘汰されるという市場の原理はありますし、実際に、東日本大震災を受けて、もともと経営に問題を抱えていた企業が廃業する傾向が明らかになってきています。一方で、社会への影響を考えれば、国や地方自治体によって、特に、事前に地震への対策を進める中小企業を支援する、もしくは優遇することを考えても良いかもしれません。事業の存続を真剣に考えている、地域の中核となる中小企業が、自発的に、大きな地震や自然災害に備えることを促す仕組みづくりです。

 一方で、中小企業としては、リスクマネジメントは利益に結びつかない費用と考えるのではなく、保険に加入していることや耐震補強していることで、災害などが起こっても製品の安定的な納入を続けることができることをアピールし、営業に役立てていくことも可能ではないかと思います。リスクマネジメントによる事業の継続性の確保は、自社の存続という意味だけでなく、取引先の信頼を高め、地域経済に貢献していくものであるといえるのではないでしょうか。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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