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グロテスクを含み、周囲を侵食する「かわいい」は、日本の美意識の王道

伊藤 氏貴 伊藤 氏貴 明治大学 文学部 教授

完璧に対する一種のあきらめが育んだ美意識

 なぜ、日本人は不完全なものを愛でる意識をもっているのか、それは美意識を超えて、おそらく、世界観とか、宗教観に立脚するのではないかと思います。完全なもの、完璧なものは、人には望むべくもないという感覚です。日本の美意識を表わす言葉に「もののあわれ」がありますが、国語学者の大野晋は、「もののあわれ」の「もの」とは、「なんとなく」という意味ではなく、人が左右できないものが「もの」であると指摘しています。それに対して、「こと」は人が変えられるものです。すると、「ことのあわれ」ではなく、「もののあわれ」と言うとき、それは、人がどうしようもない、変えられないものに出会ったときに、人の心が動く、その心の動きが、すべて「もののあわれ」なのです。おそらく、その根底には、自然とか、神とかに対して、自分たちの力は及ばない、何もできない、という一種のあきらめにも似た感覚があるのだと思います。それに対して、西洋の文化はあきらめません。自然も、人がつくり変えることによって完璧になるのであり、あきらめずにそれを目指します。そうした西洋人に比べると、日本人は人生や世界に対する構えが違うのです。その日本人的な感覚が、不完全で、バランスが崩れたグロテスクなものに心を動かす意識を育み、それは、現代の私たちまで連綿と受け継がれているのです。

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