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衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

加藤 彰彦 加藤 彰彦 明治大学 政治経済学部 教授

日本の少子化が新しい段階に突入しました。2016年の年間出生数は97万7千人と、前年から2万9千人減少し、1899年の統計開始以来はじめて100万人を割り込みました。2017年は年末に公表された推計値で94万1千人と、さらに3万5千人ほど減少する状況です。年間3万人減のペースは、急落と言ってよく、私たちは、少子化の根本原因が無子化―すなわち子どもを1人も持たない無子人口の増大――にあるという事実を直視しなければならない段階に来ています。

少子化の原因は無子化、無子化の原因は未婚化

図1 女性の年齢別既往出生児数:2014年
加藤 彰彦
資料:Human Fertility Database
(マックスプランク人口研究所を中心とした30数カ国におよぶ国際研究プロジェクト)
 かつて「子どもは国の宝」と言われました。現在ではこうした言い方に反発を覚える人が多くなりましたが、生まれ来る子どもたちが日本の未来を象徴する存在であることに変わりはなく、社会の土台をなす将来世代が生まれない社会に未来はありません。

 昨年公表された国立社会保障・人口問題研究所(社人研)による最新の将来推計では、日本の年間出生数は、2040年に74万2千人、2065年に55万7千人、そして100年後の2115年には31万8千人にまで減少すると予測されています。この推計でも直近の2015年~2020年の5年間の減少数は10万人と大きいですが、年平均では2万人減ですから、毎年3万人減という現在の実績値は、かなり速いペースで出生数の減少が始まったことを、またこのままでは上記の少子化予測を大幅に前倒ししなければならなくなることを示唆しています。

 まず、少子化の根本原因について考えてみましょう。図1をみてください。このグラフは、女性の年齢別既往出生児数――各年齢までに出産した子ども数――を示しています。20~49歳の再生産年齢にある女性のうち、子どもを持ったことのない無子の女性の割合は47%にのぼります。2014年のデータですから、2018年の現在では5割を超えたことでしょう。少子化対策が始まる直前の1992年の値は35%であり、無子は20代に集中していました。そのため子育て最盛期の30~49歳でみると無子女性は15%に過ぎませんでしたが、2014年には33%に達しています。男性のデータはありませんが、未婚率の男女差を考慮すると、現在の20~49歳男性の無子割合は60%強、30~49歳では50%程度になるでしょう。男女ともに再生産年齢人口の過半数が子どもを持っていない時代――すなわち無子化社会の時代の到来です。

 このような無子人口の持続的な増大が平均子ども数を押し下げてきました。では、無子化の原因は何でしょうか。答えはご存じのとおり未婚化です。日本では子どもの98%は結婚している夫婦の間で生まれるので、結婚と出生はほとんど同義です。それゆえ結婚が減って未婚率が上昇すると、ダイレクトに出生率が低下します。それでは、未婚化の原因は何でしょうか。

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